社会人大学とは、社員一人ひとりに学びを提供する新しい企業の形です。学生(=社員)の成長に何よりも重きを置いています。
技術革新やグローバル化によって働き方や生き方が多様化している今、日本社会は大きく変動しています。また、少子高齢化や、経済成長率の鈍化などの問題から、多くの人の生活に不安が生じています。5年、10年先見通せない時代を生き抜くためには、個人の能力を高める必要があるでしょう。
この記事では社会人大学とはなにか、なぜ必要なのかを、時代背景と併せて解説していきます。
- 社会人大学とは学び場としての新しい企業の形←いまここ
- “安定”の性質が変わっていく時代だからこそ、個人の力を高めよう
- 「個」の活躍が、日本経済を元気にする
- 個人の能力が問われる時代が来ている
- 新しい企業の形「社会人大学」の定義と制度
目次
社会人大学は社員一人ひとりに学びを提供する新しい企業の形
社会人大学(=企業)のミッションは、一人ひとりの学生(=社員)のキャリアアップを支援することです。学生が働く準備を研修で整え、キャリアプランに直結する業務やプロジェクトを提供。働く人が、自分らしく自分のペースで成長できる環境を用意します。また、メンターがついて学生のキャリアプランについてアドバイスをします。
- 研修や業務を通じて学生(=社員)に学びの場を提供する、新しい企業の形
- メンターが学生(=社員)のキャリアアップをサポートする
- 学生(=社員)は仕事を通じてスキルアップをして、実績を残せる
- 学生(=社員)は理想のキャリアを実現できる
一般的な企業は、会社のミッションを達成するために社員が一致団結して働きます。社会人大学では、一人ひとりの学生(=社員)が、自分の理想のキャリアを実現するために働きます。一般的な企業とは異なる、新しい企業のあり方です。社会人大学の学生は業務を通じて、2つのスキルを学べます。
- ビジネスマナーや報告・連絡・相談などの社会人スキル
- 専門的スキル
社会人スキルとは
社会人スキルとは、ビジネスマナーやメールの送り方、報告・連絡・相談の方法など、ビジネスパーソンに必要な基礎能力です。人と人とが協力し、モノを売ったりサービスを提供したりするのがビジネス。会社員であれフリーランスであれ、重要なのはコミュニケーションです。
大学生のままでは、社会人として働くイメージをつかめない人が多いでしょう。アルバイトやインターンで社会経験を積む機会はあります。しかし、アルバイトやインターンは大学生という身分にある種「守られている」状態です。そのため、ビジネス上の大きな責任が伴うことは無いでしょう。責任を伴う仕事をしなければ、ビジネスで通用するスキルをすべて身につけることは難いです。
社会人大学は、学生(=社員)に責任ある業務を任せます。学生(=社員)は、ビジネスパーソンとして活躍するための社会人スキルを働きながら学べます。
専門的スキルとは
専門的スキルとは、職業や職種に求められる専門分野の知識や技術です。
例えば、IT業界であれば、プログラミングやネットワーク、セキュリティなどの専門知識が必要です。金融業であれば為替や株式についての知識、サービス業なら人との接し方やサービスの知識など、仕事によって求められる能力は様々です。
学生(=社員)は、仕事をするために最低限必要な知識や技術を、研修で身につけます。研修後は業務を通じて働きながら専門的スキルをより高めていきます。
社会人大学と学生はお互いにWinWin
社会人大学は、学生(=社員)が自分のペースで成長できる研修や業務、キャリアパス、サポート体制を用意します。育成した学生が成長すれば、社会人大学を実践する企業の業績向上につながるでしょう。また学生は、成長できる環境が整っているので、安心してキャリアアップに集中できます。
企業と社員とがWinWinの関係だからこそ、社会人大学は成り立ちます。
社会人大学を実践する企業の3つのメリット
社会人大学は企業に3つのメリットをもたらします。
- 成長意欲のある人と出会える
- 優秀な人財が社内外で活躍する
- 実績が企業成長に繋がる
今の日本は、少子高齢化で生産年齢人口が減少し続けています。そのため、優秀な人財を確保することが非常に困難です。社会人大学は、個人のキャリアプランを尊重し、サポートする点が強みです。キャリアアップのサポート体制をアピールすれば、成長意欲がある人が集まるでしょう。
成長意欲がある人は、積極的に専門知識を学んだり資格と取ったりするでしょう。その人が成長したときには、仕事でいい結果を残し、会社の成長にもつながるはずです。
また、また働き方改革の一環として、副業や複業が解禁されていきます。優秀な人財が社外でも活躍すれば、社内に新たなビジネスが生まれる可能性があります。
学生(=社員)の4つのメリット
社会人になったときに「誰の何のために働いているのか分からない」「自分のやりたいことに辿り着けるか分からない」と不安を抱えている人もいるでしょう。社会人大学にはそんな不安を解消できる4つのメリットがあります。
- 社会人スキルが身につく
- 専門的スキルが身につく
- 実務経験と実績が手に入る
- 自分の夢に近づける
研修を通じて社会人として働くための社会人スキルを身につけられます。また、実務を通して専門的スキルも身につけられます。
社会人大学の特徴は、個人のキャリアアップにつながる仕事だけを学生(=社員)に任せる点です。学生は自分のキャリアプランを達成することに集中できます。専門分野で経験や実績を積み上げれば、自分の夢に最短距離で近づけるでしょう。
スキルアップで人生の選択肢が増える
社会人大学を実践する企業は個人のキャリアアップを尊重します。スキルアップをして実力がついた学生(=社員)に関しては、キャリアの選択を学生に委ねています。
スキルアップをして、「個」としての自分の能力を高めれば、その人はどこでも誰とでも働けるはず。スキルと実績さえあれば、学生(=社員)はキャリアに多くの選択肢を持てます。転職するもよし、独立するもよし、社会人大学(=企業)で新規事業を立ち上げてもよし。自分の理想の働き方を手に入れることができます。
日本は学生と社会人のギャップが大きい
多くの日本の学生は、大学生になってから、キャリアについて本格的に考え始めます。義務教育を受け、大学受験をして、一斉に就職活動を始めることが「普通」。そのため、職業やキャリアに関して考える時間が少ない状況です。
働き方や生き方の選択肢が増えた今の時代では、個人が望む理想のキャリアも多様化し、達成する方法もさまざまです。大学生から社会人になったとき、「自分が本当にやりたいこと」と「社会人としての自分」にギャップを感じる人が増えていくでしょう。
社会人大学は個人が望むキャリアの実現をサポートするガイド役として時代に求められています。社会人大学が求められる背景を解説していきます。
新卒の3割は3年以内に離職している
まずは、新卒の離職率を見ていきましょう。「新規学卒就職者の学歴別就職後3年以内離職率の推移」によると、社会人になった新卒の3割程度は、3年以内に離職しています。
次に、厚生労働省の「平成 28 年雇用動向調査結果の概況」を参照しましょう。
転職の理由 | 20~24歳 | 25~29歳 |
自分の仕事内容に興味を持てなかった | 6.8% | 7.9% |
能力・個性・資格を生かせなかった | 4.4% | 6.5% |
合計 | 11.2% | 14.4% |
※平成 28 年雇用動向調査結果の概況の転職入職者が前職を辞めた理由別割合を基に作成
仕事内容に疑問に興味を持てなかった人は、やりたい仕事が見つかっていないのではないでしょうか。また、自分の能力を生かせないと思っている人は、自分らしく働けていないという悩みを抱えているのではないでしょうか。
20~24歳の11.2%、25~19際の14.4%が仕事の内容に不満を抱えているのは、企業に新卒を育てる余裕がなくなっていることも関係しているかも知れません。もし企業が新卒の社員をただの労働力とみなしていたら、新卒の社員は働くことに価値を見出しづらいはずです。
働き方や生き方が多様化し、自分のやりたいことが定まらずに、キャリアに迷ってしまう人がいます。この傾向はこれからもっと高まっていくのではないかと考えています。
新卒をいずれ育てられなくなる日本
専門的なスキルを身につけている日本の大学生は、多くありません。大学を卒業するまでに、仕事に必要なスキルの訓練を受ける機会がほぼ無いからです。
しかし企業は、優秀な学生であれば、専門知識を持っていなくても採用します。多くの企業は新卒を一括で採用し、人財を長期的に育成しているからです。
学生は就業経験や仕事に関する知識がないまま、ポテンシャルで採用されます。そのため社会人になったときに、やりたいことと与えられた仕事に、ミスマッチを感じてしまうこともあるでしょう。
また現在は、グローバル化で競争が激化しています。そのため、人財を育成して、定年まで雇用する体力がなくなった企業も増えています。派遣労働や有期雇用などが増え、企業で育成を受けられる人が減少していくでしょう。そうなったときには、自分の能力は自分で伸ばしていかなければなりません。
新卒即戦力のヨーロッパ
ドイツやイギリスなどヨーロッパでは、大学を卒業し就職する際は即戦力として採用されます。また大学に進学した人は、専攻した学問以外の仕事に就くことはほとんどありません。
ドイツで大学に進学する人は、中学校進学時点で、ギムナジウム(高等専門教育のための準備学校)に進学します。また、大学に進学しないのであれば、職業訓練を受けることが義務付けられています。イギリスでは高校卒業時点で大学に進学するか、仕事に直結する専門学校に進学するかを選択します。
早い段階から仕事を選択し、集中して専門的なスキルを磨けます。そのため、社会人になったとき、仕事と自分のやりたいことにギャップを感じることは少ないでしょう。
学生と社会人のギャップを埋める社会人大学
社会人大学は、学生(=社員)が働きながらスキルアップできる環境を用意することで、学生と社会人のギャップを埋めていきます。例えば、学生の専門的なスキル取得支援やキャリア形成にアドバイス行います。
学生(=社員)は、働きながらスキルアップし実績を残せます。そのため、自分の理想を叶えるために必要な能力を培うことができるのです。
社会人大学は、成長意欲がある人を育成します。個人の成長が企業の成長に繋がり、日本の経済を活性化させていくでしょう。5年後、10年後を見通すことが難しい今だからこそ、自分らしい働き方を実現するために、個人の能力を高めましょう。社会人大学に入れば、どこでも誰とでも働いていけるスキルを身につけることができます。