私たちEarth Technologyが提唱する新しい企業のあり方、社会人大学。本記事では、なぜ社会人大学が必要なのかを、世界から見た日本の状況をもとに解説します。
国際的な日本の競争力は低下しています。各国のGDPや生産性、英語力ランキングの結果などを紹介していきます。海外の先進国と日本を比較すると、あなたも焦りを感じずにはいられないでしょう。
少子高齢化問題を抱え、経済成長率が鈍化している日本の経済を盛り上げるには、「個」の力が欠かせません。
- 社会人大学とは学び場としての新しい企業の形
- “安定”の性質が変わっていく時代だからこそ、個人の力を高めよう
- 「個」が活躍することで、日本経済が元気になる←いまここ
- 個人の能力が問われる時代が来ている
- 新しい企業の形「社会人大学」の定義と制度
目次
日本の競争力が低下している

アジア諸国の経済成長率の推移|世界銀行のデータをもとに作成
2010年の日本のGDP(国内総生産)は5兆4742億USドル、中国は5兆8786億USドルでした。この年、初めて中国のGDPが日本のGDPを超えました。
中国の経済発展は目覚ましいですが、日本は成長できない期間が続いています。中国以外にも、韓国やベインド、シンガポールなどのアジア諸国は、経済成長率では日本を大きく上回っています。
日本はしばしば「ものづくり大国」と呼ばれます。日本の電化製品は品質が高いと評判でした。しかし近年は、世界的に品質が高いと評判の電化製品は韓国製です。日本の電化製品の国際的シェアは韓国製品に奪われ始めています。
諸外国の経済成長
前述の通り、日本のGDPは2010年に中国に追い抜かれました。現在もその差は広がるばかりです。2016年の中国のGDPは11.2兆USドル(約1201兆円)。日本の4.9兆USドル(約525.8兆円)を大きく引き離して、中国は世界第2位の経済大国に成長しました。
中国の大きな経済成長の背景には、「百度(バイドゥ)」「阿里巴巴(アリババ)」「騰訊(テンセント)」といった世界的大企業の登場があります。特にテンセントは、AmazonやGoogle、Appleといった世界中で知らない人はいない大企業と肩を並べる存在です。
その一方で日本はどうでしょうか。日本にも日立製作所、東芝、NECなどの大企業が世界を舞台に活躍しています。しかし、いずれの企業も歴史の長い企業です。世界で戦える若い企業が日本には少ないのが現状です。
こうして近隣の国の経済成長を確認すると、どことなく日本社会に漂っている閉そく感は、経済成長できていないのが一つの要因なのではないかと思います。
他国の技術力向上と日本の競争力低下
韓国のLGやSAMSUNGといったメーカーの電化製品は、日本製品に勝るとも劣らないクオリティで国際的なシェアを広げています。
韓国の貿易額は、年々増加しています。2016年の貿易輸出額は4,955億ドル。2010年の4,664億ドルと比較すると、確実に増えていることが分かります。韓国の輸出品のうち、3割は電子製品です。まとめると、韓国の電子製品は世界中に求められるようになってきているのです。(参考:世界・GDPに対する貿易額ランキング)
2015年新語・流行語大賞を受賞した「爆買い」という言葉を覚えているでしょうか。日本の家電は質が良いから、と中国や台湾の富裕層が日本に旅行に来て家電を大量に買っていました。今では、外国人旅行客は日本に来てモノを買うのではなく、コトを消費するようになりました。
もはや「高品質」は、日本製品だけではなくなってしまいました。世界中に品質の高い製品が広まる中、日本製品は「高品質」以外の価値を付加しなければ生き残れない状況になっています。
成長のためには英語を使える人財が必要
日本がこれから成長するためには、貿易が一つの鍵になるでしょう。海外に製品を売り、日本製品のポジションを確保していかなければなりません。輸出するには、海外の貿易関係の企業とのコミュニケーションが発生します。
貿易には、グローバルに活躍できる人財が必要不可欠です。しかし、世界共通語である英語を使いこなせる日本人は少ないと言わざるをえない状況です。グローバル人財の育成が、今の日本の急務といえるでしょう。
英語能力指数に見る日本の英語能力
EF Education Firstの「EF EPI(英語能力指数)」によると2015年、日本は70ヶ国中30位で「標準的な英語能力」の国と評価されました。しかし、2017年には80ヶ国中37位までランキングを落とし、「低い英語能力」の国に評価が変わってしまいました。
ちなみに、2017年の韓国は30位。2011年以降、ランキングは下降傾向にありますが、評価は「標準的な英語能力」を維持しています。
日本は2020年から小学校5、6年生を対象に、英語の授業を成績をつけはじめます。これから学校教育を受ける子ども達は、高い英語能力を習得するかもしれません。しかし、問題は現在働いている人達。グローバルに活躍するためには、自力で英語力を身につけなければなりません。
グローバルの市場に活路を求めなければならない
人口減少の影響から、日本の国内市場は拡大が難しい局面に来ています。日本国内市場は飽和状態なので、企業は海外の市場に活路を見出すしかありません。
ITや物流技術の向上により、海外の市場に参入するのは容易になりました。しかし、海外進出にはやはりグローバル人財が必要不可欠。グローバル人財の育成環境を整えることが切に望まれています。
労働時間と生産性の比較
日本人の労働時間の長さは世界的に有名です。しかし、労働時間に経済成長が伴っていない状態です。重要なのは労働生産性です。本章では、経済協力開発機構が発表した「労働者1人あたりの平均年間労働時間」と各国のGDPを比較し、世界各国の生産性の違いを紹介します。
世界の労働時間とGDPの比較
2017年のデータを元に、各国の平均年間労働時間を比較します。GDPは、名目GDP(単位:10億USドル)を記載しています。
順位 | 国名 | 平均年間労働時間(H) | GDP(10億USドル) |
1 | ドイツ | 1,356 | 3,684.82 |
2 | デンマーク | 1,408 | 324.48 |
3 | ノルウェー | 1,419 | 396.46 |
4 | オランダ | 1,433 | 825.75 |
5 | フランス | 1,514 | 2,583.56 |
(中略) | |||
16 | 日本 | 1,710 | 4,872.14 |
(中略) | |||
24 | アメリカ | 1,780 | 19,391 |
(中略) | |||
32 | ロシア | 1,980 | 1,527.47 |
33 | ギリシャ | 2,018 | 200.69 |
34 | 韓国 | 2,024 | 1,538.03 |
35 | コスタリカ | 2,179 | 575.65 |
36 | メキシコ | 2,257 | 1,149.24 |
日本は、16番目に労働時間が短い国でした。日本の平均労働時間は1,710時間で、アメリカ(1,780時間)よりも短いという結果でした。
労働時間の長い国をみると、これから大きく経済発展していく可能性のある国ばかりです。特にメキシコには、日本の自動車メーカーが注目している国です。2014年にマツダとホンダが新工場をメキシコに作りました。2019年には、トヨタが新工場を設立する予定とのこと。(参考:東洋経済|トヨタ進出で激化、メキシコの「人材争奪戦」)
生産性の比較
日本の時間あたりの労働生産性をみてみましょう。OECD加盟諸国の2016年のデータです。年間平均労働時間が短い国から2カ国、長い国から2カ国をピックアップ。また世界経済の中心であるアメリカも取り上げて、日本の生産性と比較しています。
国名 | 時間あたりの労働生産性(単位:USドル) |
アメリカ | 122,986 |
ノルウェー | 117,792 |
ドイツ | 97,927 |
日本 | 81,777 |
ギリシャ | 70,692 |
メキシコ | 44,177 |
労働時間の短いノルウェーとドイツは日本よりも生産性が高いですね。短い時間で高い成果を出す働き方ができているので、一人ひとりの生活が豊かなのではないでしょうか。一方で、労働時間の長いギリシャやメキシコは労働生産性が低い結果になりました。
日本の生産性は、OECD加盟諸国の中では、中間に位置しているといえます。しかし日本は今後人口が減っていくのは目に見えています。働き方を変えていかないと労働生産性は落ちていくばかりなのではないでしょうか。
働き方改革、本当に大丈夫?
過労死をなくすため、そして労働人口を確保するためにも働き方改革は必要です。しかし、長時間労働を是正するだけでは不十分です。
生産性を上げなければ、ますます日本の競争力が下がっていきます。日本の企業は、生産性の高さを評価する制度作りをしていかなければなりません。生産性の高い人財を適切に評価しなければ、優秀な人財は企業に見切りをつけるでしょう。
生産性を向上させるために必要なこと
生産性を向上させるためには、成果ベースでの評価制度が必要です。
「生産性が高い」とは、アウトプット(得られた成果)÷インプット(投入資源)が高いこと。いかに熱心に仕事に打ち込んだとしてもアウトプットが低ければ評価は低くなるでしょう。例えば、アメリカの動画配信会社Netflixのポリシーをみてみましょう。
Aレベルの頑張りでBクラスの結果を出す従業員と、Bレベルの頑張りでAクラスの結果を出す従業員がいたとしたら、我が社は迷いなく後者を優先し、前者を続けるとクビになる可能性もあります。
出典:日本の働き方改革を阻む5つの悪習慣|freshtrax
成果ベースでの評価制度が必要な理由は「優秀な人財の流出を防ぐ」ためです。優秀な人財の成果を正当に評価し、報酬を与えれば、働くことのモチベーションがあがるでしょう。
生産性を挙げるためには雇用制度改革も必要
生産性を向上させるためには、人財の流動性を高めなければなりません。欧米では転職を繰り返すキャリアアップの方法が一般的。それにともない人財の流動性も高い状況です。しかし、日本は国際的に人財流動性が低いです。これには年功序列・終身雇用制度の影響が根強いことが考えられます。
今の日本の雇用制度では、成果ベースでの評価制度の導入は困難です。なぜなら雇用者が被雇用者を簡単に解雇できない制度設計だからです。極論を言うと、成果の上がらない社員を解雇できなければ成果ベースの評価は成り立ちません。
優秀な人財がよりレベルの高いステージで活躍できれば、経済の新陳代謝を高められます。少子高齢化問題を抱える日本は、人財の適材適所と有効活用を進めなければなりません。生産性を向上させるために、雇用制度改革も合わせた働き方改革が必要です。
競争力を取り戻すためには世界で活躍できる人財が必要
日本が経済成長率を上昇させるためには、生産性と国際的な競争力を高めていかなければなりません。ものづくりの技術水準は、依然として日本のストロングポイントのはずです。ものづくりのというストロングポイントを活かす鍵は「英語力」です。
少子高齢化や市場の成熟化で国内市場が飽和している今、海外マーケットに進出しなければ、成長は望めません。海外マーケットへ参入するためには、製品やサービスを海外に売り込める、グローバル人財の育成が必要です。英語を使いこなし、取引先の国のビジネスに精通している人がいれば、大きなビジネスチャンスが生まれるでしょう。
英語力を身につけて「個」の力を高めよう
もちろん、英語力を高めることは個人の成長にも繋がります。多種多様なバックグラウンドや価値観を持つ人と出会えるからです。
日本にいては気がつけない考え方に触れれば、自分の視野や知見が広がります。また、人との出会いが、ビジネスチャンスにつながることもあります。語学力を生かして世界を舞台に働く人は、より多くの成長機会を得られるでしょう。
シリーズ第3回では国際社会からみた日本を俯瞰し、英語力の重要性を紹介しました。第2回ではITスキルの重要性も紹介しています。「英語」と「IT」の両スキルをかけ合わせた人財が増えていくことが日本経済の活性化につながるでしょう。
また、個人が「英語×IT」スキルを持っていれば、どこでも誰とでも働ける力がつくはずです。