あなたが仕事のやりがいを感じるのはどんなときですか? 成果が出る、チームの一体感を感じる、難しい仕事に挑戦している……いろいろあると思います。最近は若い世代を中心に、「仕事にやりがいを感じられずに悩んでいる」という人が増えています。今回はそもそも仕事のやりがいとは何か、なぜ悩むのか、悩みを解消する方法などを紹介していきます。
仕事のやりがいに悩んで転職を考える人が多い
現在、多くの人が仕事のやりがいに悩みを抱えています。2018年4月に発表されたエン転職『8,600名に聞いた「退職のきっかけ」調査』では、エン転職のユーザを対象に、8,668名のアンケート回答をまとめています。調査によると、転職を考え始めたきっかけは「やりがい・達成感を感じない」と答えた人が36%で全体の2位でした。
そもそも仕事のやりがいって何?
仕事のやりがいを一言で説明するのは難しいです。なぜなら人によって仕事で何を重視するかが変わるからです。まずは2018年8月に発表された、エン転職『9,000名に聞く「仕事のやりがいと楽しみ方」調査』を参考に、働いている人が何にやりがいを感じているかを確認してみましょう。アンケート対象は、エン転職のユーザ9,297名です。
同調査によると、96%の人が仕事にやりがいは必要だと考えています。また、以下のシチュエーションで仕事のやりがいを感じられるそうです。
仕事において、やりがいを感じることを教えてください。
・お礼や感謝の言葉をもらうこと
・仕事の成果を認められること
・目標を達成すること仕事をやり遂げること
・自分の成長を感じること
・興味のある仕事をすること
・仕事で社会に貢献する実感を持てること
・尊敬できる人と一緒に仕事をすること
・新しい仕事にチャレンジすること
・チームで仕事をすること
・後輩・部下の成長を感じること
・自分で決める裁量権があること
・影響範囲が大きい責任ある仕事であること
出典:9,000名に聞く「仕事のやりがいと楽しみ方」調査|エン転職
アンケートの結果を見ると、人に認められたり、成長を実感できたりしたときにやりがいを感じている人が多いようです。自分の仕事で喜んでくれる人がいて、その人から感謝されたら嬉しくなりますよね。また、できなかったことができるようになったり、難しい仕事を任されるようになったりしたら、成長を実感できると思います。仕事を通して喜びや達成感を得られたときにやりがいを感じられるのではないでしょうか。
人からの評価がやりがいを生み出す
喜びや達成感を得られたときにやりがいを感じられると述べました。仕事を通して何かを得るためには自分以外の人からの「評価」が重要です。どんな仕事も一人で完結することはほとんどありません。自分の仕事は同僚や上司、クライアントなど、さまざまな人から評価されます。自分の仕事が評価されて、新しい事業を任されたら成長を感じると同時に、「頼られている」という実感もわきますよね。
また、仕事の結果だけに注目しなくてもやりがいは探せます。例えば、プレゼン用の資料を作ったときに、「とても分かりやすい資料だったよ」と上司から声をかけられたら、次も頑張ろうという気持ちになるでしょう。仕事にやりがいがあれば、「もっと頑張ろう」と意欲が生まれて、自ずと仕事にもいい影響が生まれるはずです。
「やりがい搾取」に要注意
「やりがいのある仕事です」という言葉が書かれている求人表をよく見かけると思います。その中には、働く人のやる気や熱意を利用して、安く働かせようとする求人が存在します。もちろんすべての求人ではありません。
やりがいの搾取の根底にあるのは「経験を積ませてあげるから、報酬が少なくても頑張って働いてね」という考え方でしょう。雇う側の都合から生じた、やりがいの押し売りです。
戦後復興期(1945〜1954年)や高度経済成長期(1955〜1973年)、バブル景気(1985〜1990年)など、日本経済が右肩上がりに成長していた時期があります。これらの時期は、会社の成長や自分成長、日本の成長が合致していました。そのため、仕事が人生の大部分を占めています。がむしゃらに仕事をしてやりがいを感じるのが一般的だったのではないでしょうか。
しかし、現在は社会の状況が大きく変化し、個人の価値観や働き方も多様化しています。自分のために働いて、やりがいを見つけ出せるような考え方をしましょう。
仕事にやりがいを感じられなくなる7つの原因
この記事を読んでいるということは、あなたも仕事にやりがいを感じられていないと悩んでいると思います。この章では仕事にやりがいを感じられなくなる7つの原因を紹介します。仕事にやりがいを感じられなくなる原因を探って、対処していきましょう。
やりがいがない原因1:評価されていない
やりがいを感じるためには評価が大事とお伝えしました。自分の仕事が評価されないと、満足感や達成感を得られず、やりがいも感じられないでしょう。
まず自分が評価されていない現状を確認しましょう。「仕事で成果を残せていない」「自分の取り組みを知っている人が少ない」などの要因が考えられます。仕事の成果が足りていないのであれば、スキルアップをする努力が必要です。結果を残しているはずなのに評価をもらえていないのであれば、自分から仕事に対するフィードバックを求めていきましょう。同僚や上司に自分の仕事に対する取り組みを知ってもらえると同時に、仕事を改善するためのヒントを得られます。
やりがいがない原因2:信頼し合える仲間がいない
仕事にはチームワークが必要です。同僚や上司から信頼されていれば、重要な仕事を任せてくれるでしょう。そんなときは、期待に応えようとして仕事のモチベーションが上がるはず。
しかし、信頼関係がなければ仕事を楽しむことはできません。重要な仕事を任せてもらえなかったり、疎外感を感じたりするのでは。自分の存在意義を見出だせず、やりがいも感じられないでしょう。
信頼できる仲間を作るための第一歩は、積極的なコミュニケーションです。「自分はこんな人間で、こんな事ができます」と自分を理解してもらうためにアピールしましょう。自分から悩みを相談するのも手段の一つです。また、同僚や上司のことをよく知ることも重要です。コミュニケーションを取って、一緒に仕事に取り組んでいるうちに自然と信頼関係が生まれていくはずです。
やりがいがない原因3:理想的な先輩や上司がいない
職場に自分のお手本となるような人がいなければ、自分の将来を想像できずに、仕事に打ち込めないという人もいるはずです。特に先輩や上司は5〜10年先の自分の姿と言っても過言ではありません。
もし職場に憧れの人がいなければ、職場の外に憧れの人を探すのをおすすめします。「あの人みたいになりたいから、自分は今の仕事を頑張る」とやる気が出るのではないでしょうか。
やりがいがない原因4:キャリアプランを作れていない
仕事を通して自分がどうなりたいか、どんなキャリアを作りたいかが定まっていないと、やりがいを感じることは難しいでしょう。明確な目標がなければ、仕事はただの作業になってしまうからです。ただ指示を受けて、命じられた仕事のみをこなすのは確かに楽です。しかし得るものはほとんど無いでしょう。主体的に仕事に取り組むからこそ、仕事から多くの経験を得られるのです。
「なりたい自分」を想像できていれば、主体的に仕事に取り組めます。まずは10年、20年先に自分がどうなりたいかを想像してみましょう。そうすれば、全ての仕事を自分の糧にできるはずです。
やりがいがない原因5:給料や勤務条件で仕事を決めた
生活をするためにお金は重要です。また福利厚生の充実や働きやすさなどの勤務条件も重要でしょう。しかし、条件を最優先してしまうと、仕事にやりがいを感じられなくなる可能性が高まります。「本当は企画職をやりたかったけど、条件を考えて仕事を選んだら営業になった」。このような人は待遇や労働環境がいい中で働けていても、心の中にしこりが残るはずです。
やりたいことがあったのに別の仕事を選んでいるので、不満足感がつきまとうのだと思います。やりたいことがあるのなら、思い切って転職をしたほうがいいでしょう。いきなり転職はできなくても、副業や複業、ボランティアなど、少しずつでもいいので自分が情熱を捧げられる仕事を始めてみましょう。
やりがいがない原因6:職種や仕事内容が自分に合っていない
やりたいと思って就いた仕事が、実は自分に合っていない場合もあります。新卒で就職した人は、想像していた仕事内容と現実のギャップに悩むことが多いようです。自分に合わない仕事だと、結果を出すことも難しくなります。心から楽しんで仕事をできなければやりがいも感じられなくなってしまうでしょう。
自分のやりたいことが見つかっていれば転職を考えるのも一つの手です。しかし、なんとなくイメージと違うと思っている段階であれば、今の仕事でできることを最大限に頑張りましょう。仕事を続けているうちに、もしかしたら仕事が好きになるかも知れません。また、仕事を頑張っていれば少なからず成長できるはずです。頑張った経験が転職を決意したときに大きな手助けになるはずです。
やりがいがない原因7:会社や仕事に将来性がない
会社や、仕事内容に将来性がなければ、どんなに頑張っても仕事を続ける意味がないと考えてしまうようです。これでは仕事にやりがいを感じません。会社や仕事がなくなってしまうかも知れないと考えたら、自分の将来もに不安なるはずです。そんなときは見切りをつけて新しい仕事を探すのが一番です。
「やりたいこと」はめったに見つからない
やりがいを感じられない原因を紹介したときに「やりたいことがあるなら転職することもおすすめです」とお伝えしました。現在、「これからは個の時代。自分の好きなこと、やりたいことを仕事にしよう」という世の中の流れがあります。確かに自分が好きで本気で取り組める仕事をできれば、やりがいを感じやすくなると思います。
しかし、本当に自分のやりたいことが分かっていて、それを仕事にできる人は多くはありません。ジョージタウン大学准教授のカル・ニューポート氏は、自身の著書『今いる場所で突き抜けろ』(カル・ニューポート著、廣津留真理 訳、ダイヤモンド社、2017年)で、成功している人は、好きなことではなく得意なことを仕事にしていると述べています。やりたいことがなくて「仕事にやりがい」を持てないと悩みを抱えている人は、ぜひ一度ニューポート氏の著書を読んでみましょう。著書の中から仕事にやりがいを感じるための考え方を紹介します。
得意なことを仕事にする
ニューポート氏は「やりがいのある仕事をしている人たちは、やりたいことや好きなことを追求した結果その仕事に就いたのか」というテーマを解明するために、インタビューや調査を重ねました。その結果を『今いる場所で突き抜けろ』で発表しています。著書の中には、アメリカの公共ラジオ局のパーソナリティであるアイラ・グラス氏が「どうすればやりたいことや得意なことが見つかるか」という質問を受けているエピソードがあります。
グラス氏は「大切なのは、仕事をとことんまでやること、スキルが身につくまでがんばることだ。そこが一番きついんだけどね」と答えています。グラス氏はラジオ番組にかかわるスキル長期間に渡って磨き続けた後、興味があることに挑戦していったそうです。本人のエピソードでは、自分が何を好きになるかは前もって分かるものではないということが伝えられています。理屈で考えてモノゴトを判断する前に、行動することが重要です。
天職を見つけるのには時間がかかる
組織行動学を研究しているエイミー・レズネフスキー氏を中心に『Jobs, Careers, and Callings: People’s Relations to Their Work』という研究が発表されています。仕事の種類を労働とキャリアと天職の違いを以下のように分けて説明しています。
・労働:喜びや満足感を得るよりも、生活費を得るための仕事
・キャリア:キャリアアップのための仕事
・天職:社会的に役立つ仕事に喜びを感じ、人生の一部になっている仕事
出典:Jobs, Careers, and Callings: People’s Relations to Their Work|Journal of Research in Personality
レズネフスキー氏は、「地味で憧れを持たれないような仕事を天職と呼ぶ人はいないのではないか」というテーマで調査。大学の事務職員に自分の仕事を労働・キャリア・天職のどれとして捉えるかを質問しています。調査結果では、労働・キャリア・天職の回答結果はほぼ均一に1/3ずつに分かれたそうです。天職と答えた人は勤続年数が長いという特徴がありました。
長期間仕事に取り組み、スキルを磨いてきた人ほど、仕事に熱心でやりがいを感じていたそうです。一つの仕事に取り組み続ければスキルアップできます。その仕事をそのまま天職として続けられればやりがいを感じられるでしょう。また、仕事を続けるなかで自分のやりたいことが見つかることもあるはずです。やりたいことが見つかったときに、一つの仕事に継続的に取り組んだ経験が役に立つはずです。好きなこと、やりたいことを仕事にできていないと感じている人は、まず今の仕事に本気で取り組んでみましょう。
仕事のやりがいについて紹介してきました。仕事のやりがいは人との関わりの中から生まれます。やりがいが感じられないと悩んでいる人は、積極的に同僚や上司とコミュニケーションを取って評価をもらえる状況を作りましょう。
また、やりがいを感じるために必ず自分の好きな仕事しなければいけないわけではありません。長期間取り組み続けることで見つけられるやりがいもあります。まずは今の仕事に本気で取り組んでみましょう。