自分らしく働く
2018.09.17

「自分との対話」「他者との繋がり」−フリーランスシェフ田村浩二さんの自分らしい働き方

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BY Philly

「自分らしく働きたい」社会人の誰もがそう思っていることでしょう。しかし目標や方法が定まらず、無機質なルーティーンワークに嘆息するばかりのミレニアル世代(1980〜1999年生まれ)も少なくないはず。

シェフの田村浩二さんは星付きレストランシェフ退任後フリーランスとなり、料理人業界に新風を巻き起こしています。 職人気質の料理人業界で田村さんが開拓した新しい働き方とは、また全業界に共通する働き方の選択方法などをお伺いしました。

田村浩二さんプロフィール

日本で料理修業の後、渡仏し一年間修業。2016年より星付きレストラン「TIRPSE」でシェフを務めるも辞し、今年8月からフリーランスに。現在は個人事業主としての仕事や会社取締役なども兼ねつつ、商品やレシピ開発なども手がける。

「作った料理」より「知識」を提供する新・料理人の働き方

−フリーランスになられたとのことですが、日々どのようなお仕事をなさっているのでしょうか?

商品開発を主にやっていますが、適宜仕事内容は変わります。定時に出社といった縛りはなく、プロダクトごとに作っては世の中に広めるという活動を行なっています。僕はずっと好きなことだけをやっている感じですね。

 

−現状の働き方が当初からの目標だったのでしょうか?

いや、こういう風になるとは思っていませんでした。 

でも、レストラン業界の働き方は「古いな」とは思っていました。自分の将来を考えたときに、レストランに勤めて、のちに自分のお店を持って10年以上続けるという働き方をしている自分の姿をイメージできなかったんです。

なので、なるべく飲食以外の人と接点を持とうと思って活動してきました。そこでたまたま気の合う人が現れて「一緒にやろうよ」という話になったのが、今の活動のきっかけですね。

 

−シェフ時代と比べて、精神面や生活面で変化はありましたか?

気持ちの面で言うと、(シェフ時代よりも)精神的プレッシャーが減りました。評論家やブロガーさんの「美味しい」「美味しくない」などの評価だけで自分の立ち位置が揺らいでしまうことに、常に引っかかりを感じていたので。 

あと、フリーランスになったら労働時間がかなり減りました。以前は朝4時に起きて、寝るのは2時という生活をやっていましたから。

 

−会社に属することとフリーランスそれぞれのメリット・デメリットは?

会社は、いい意味で決まった時間に行かないといけない。フリーランスの場合、意志が強い人はいいのですが、弱い人だとだらだらしてしまう。会社に決まった時間に行くということが、意志が弱い人にはプラスに働くのではないかなと思います。あと、会社だと自分の意志とは関係なく仕事が進むのはいいとも思いますね。

 

−会社勤めだと、うまく自律できるよう鍛えられる面もありますよね。

そうですね、働くリズムも会社に勤めて整えることができるので。

 

−フリーランスのシェフの働き方とは?

ある程度シェフとしてレストランで働いて、自分の顧客の家に行ってプライベートディナーをやるというのがメジャーかなと思います。

でも僕は、一回料理を作って(その都度)お金をもらうという旧来のやり方から離れたくて。なので、商品開発やキッチンレイアウトのアドバイスとか、メニューを誰でも同じく実施できるよう構築するといったことなどに取り組んでいます。  

つまり、場所(レストラン)を持つか持たないかという違いだけのフリーランスシェフになりたいわけではなく、自分の知識やノウハウをお金に変えていけるような働き方をしたいと思っているんです。

「レストランを持たない」というのも(シェフ業界の)働き方改革だと思います。ただ、料理を作って、目の前の人が食べて、お金をもらうという労働集約型の働き方は全く変わらない。根本の働き方を変えていかないと、フリーになる意味はないと僕は感じています。

 

−「ミスターチーズケーキ」や「アロマティザン」など、さまざまなプロジェクトを動かされていますが、そのきっかけは?

作ろうと思って作ったわけじゃないんですよね(笑)

お茶のプロジェクト*に関しては、知り合いの家でケータリングをしていた時期があったんです。その時すでにお茶はできていて、ゲストに飲んでもらい好評だったので事業にできるかなとは思っていました。そこで「お茶の事業をやろうよ」という方が出てきて実際に始めることになったのです。声を掛けてくれる人がいたからこそのプロジェクトです。

次に、チーズケーキについて。僕は小さい頃からチーズケーキが好きで、誕生日ケーキは毎年チーズケーキでした。 「世の中にあるチーズケーキが全然美味しくないな、だったら自分で作ろう」 と思ったのがきっかけです。

美味しいものができたなと感じたので売っていこうとしたのですが、売り口もないしやり方も知らなかったので、とりあえずInstagramのストーリーに投稿したんですね。そして、買ってくれたうちの一人が食べ歩き好きな人だったんです。その人が食べ歩きの会に持っていってくれて、その中の一人がInstagramのインフルエンサーでアクセス数の多いブログを運営していて、そのブログにチーズケーキのことを投稿してくれたんです。

その後、僕のInstagramのフォロワーが一気に200人ぐらい増えました。最初はチーズケーキの販売をInstagramのDMで全てやっていたんですが無理があるなと思い、知り合いにBASEを紹介してもらいました。その後Twitterでも購入してくれる人が増え始めました。

 

どちらも最初から売ろうとは思っていなくて、共感して買ってくれる方がいたらいいなと思って始めたら広まってしまった、という感じです。自分が興味のあるものを突き詰めていったら、自然と購入者が増えてきたので事業にすることができました。マーケティングとかはせず、とにかく世に出してみるところから始まりました。

*お茶のプロジェクト:L’Aromatisane

https://twitter.com/Tam30929/status/1005897503768653824

新たな挑戦は、一つのことに打ち込み評価を得てから始めよ

−ミレニアル世代は仕事を変える人も多いのですが、一つのことを長く続けて得られた経験についてどう思いますか?

料理人は特殊な仕事、技術職なので1人前になるには時間がかかります。なので、1つのことを長く続けられたことは自分の自信にも繋がっています。

レストラン業界は辞める人が多いんですよね。労働時間も長いし、休みも少ないし、給料も安いので。でも、そこで生き残ってシェフとして料理を提供し、ある程度評価してもらえたというのは自分の中で成功体験になっています

もし、若い料理人がすぐに新しい事業を起こしたとしても、実力不足なのでうまく立ち上がらないと思います。まずは頑張ってシェフになって、自分の顔と名前で世間とコミュニケーションを取れるようになってから新しいことを始める方が、結果が出るスピードが早いはず。「この人の料理は美味しい」と認知された上でアクションを起こすべき。認知されていない状態でいいモノを作ったとしても、世間の人は手を出しにくいのではないかな。

 

−今後田村さんを見て、新しいことを始める若い料理人が増えてくるのではないでしょうか。

一緒に働いたことのあるスタッフで「働き方を変えたい」という人は何人かいますね。でも「今すぐじゃないよね」という話をしています。料理人として、もっと経験を積んでからの方がいいよね、とアドバイスしています。

 

料理人業界で生き残るための鍵は「繋がり」と「SNS」

写真:アタラシイヒモノ公式HPより

−Twitterでどなたかが田村さんのことを「料理人2.0」と呼んでいたのですが、今までの料理人の改善必要箇所は何か、またver2.0では何が変わったのでしょうか?

一番改善した方がいいのは、レストラン業界以外の人との繋がりをもっと作ること。レストランのビジネスモデルはとても特殊です。外との繋がりがないと、料理人は料理しかやっていないので狭い世界のことしか知らない人になってしまう。

以前ITベンチャー企業の人と話したとき、新しいお金の稼ぎ方を知ることができました。IT企業は顧客目線ですが、料理人は自分がいいと思うものを作り、共感する人を集めるというやり方。料理人にとってはその共感を集めるやり方は当たり前だけども、世間的には当たり前ではない。それを知るだけでも働き方が変わると思います。労働時間も長いし閉鎖的で、しかも繋がりがないのはもったいない。繋がりを持つだけでも大きく変わるんじゃないかな。

 

−他業界との繋がりを持ったほうがいいと思ったきっかけは?

僕が師事した東京・フランスのシェフ全員サイドビジネスをしていたんです。そういった人たちを見てきて、レストラン以外で収入を得る方法を持たなきゃいけないんだなと思っていました。もちろん皆サイドビジネスなくとも、シェフのみでやっていける方ばかりです。でも本業以外のビジネスを考え、行動を起こしている。そういった人たちを見て仕事をきたので、他業界との繋がりを持つことが当たり前だと思っていました。

 

−本業の労働時間が長いのに、新しいことに着手できたのですね。

私の師匠たちは「伝える能力」がとても高いと感じました。自分の仕事を弟子たちに適切に指示して割り振ることができるので、自分の時間を持つことができる。それで新しいことを始められていました。そもそも料理人って「技を見て盗め」という人が大概なので、作業が非効率的なんですよね。

 

−今後も料理業界で成長を続けるために意識されていることは?

やはりInstagramの流行がポイントですね。美味しいことはもちろん重要ですが、ビジュアルが同程度に重要視される傾向になってきています。日本人は器用なので、コピーが得意なんです。海外の綺麗な写真を見て、見た目だけを真似することは簡単。わかる人が食べたら、見た目だけで美味しくはないというお店が増えているんです。そういう店が一般の人の間で流行ってしまうのも理解できる。逆に本当はすごく美味しいのに、ビジュアル面で美味しく見せられていないお店には人が増えないというのも見てきました。

僕は13年料理人をやってきているので、職人気質の部分も持ち合わせています。もちろん美味しいものを作りたいのですが、それだけでは売れないし、知ってもらえない。 

今はSNSをうまく使ってマーケティングをするといった「料理を作る」以外のことを意識しないと生き残っていけないですね。美味しさを突き詰めたいという職人気質な部分を大事にしたいとは思いますが、美味しさの追求とマス(大衆)が求めるもののすり合わせも意識するようにしています。

 

−SNSで発信することに苦手意識を持っている人が少なからずいます。田村さんのおすすめ方法は?

誰かの役に立つことを発信していくことです。ものすごく有名な人以外がプライベートな内容を発信しても興味持たれないのは当然。だから、自分の持っている知識やノウハウの中から、多くの人の役に立つものは何かな、と考える。  

僕はTwitterが頭の体操になっています。自分がやっている仕事は一般的ではないので、言葉を選ばなきゃいけないし。自分自身が持っている「技術」が発信には必要です。

 

−田村さんの今後の展望についてお聞かせください。

今までは自分がいいと思えるものを作っていましたが、これからは多くの人がいいと思えるものを作らないと生き残っていけないと思います。

そして、いいものを作ったとしても知ってもらわなければ意味がない。本当にいいことをやっていればお金がついてくると思います。自分はタイミングがよかったのかな。働き方改革という言葉と内容が広まったけど、料理人・レストラン業界では働き方改革を実施している人はいない。そのタイミングでフリーの料理人になったので、必然的に注目してもらえているのかも。

下の世代の料理人が僕の働き方を見て、「こういう働き方もあるので、もっと考えて仕事しなきゃな」と思ってくれたら嬉しいですね。レストラン業界以外での働き方を意識するだけでも、レストラン業界の働き方の変化に繋がると思います。

 

幸せに繋がる働き方は自分との対話から導き出される

−「自分らしく働きたい」と願うミレニアル世代の読者にアドバイスを。

結局のところ、働き方を変える基準は、自分が幸せになれるかどうかだと思います。毎日決まった場所に行って仕事をするのが苦になるのなら、自分らしく生きるためにフリーランスになった方がいい。会社勤めが苦でないなら、そのまま会社に勤めながら新しいことにチャレンジする方がいい。自分とちゃんと対話することが大事です。

働き方改革とか、パラレルワークといった言葉に踊らされるのではなく、自分が幸せになるためにはどういう選択をすればいいのかを、自分自身で決めることが一番大事。自分は何ができるのか、何が好きなのかが分かると、できる仕事は必然的に決まってくると思います。  

自分は料理が好きだし、コミュニケーション能力もある。そう考えたら、レストランという場所以外でも料理の仕事をしていけるなと思ったので今の働き方を選択しました。勢いでフリーランスになっても、仕事がなければ生きていけないし、どうにかなるものでもないですよね。

家族や子供と遊ぶ時間をちゃんと確保したいんだったら、こういう仕事をしなきゃいけないな、これぐらいの収入が必要だなと考える。そうして選んだ仕事に対して自分の持つ能力をどう当てはめられるかな、というような考え方をして仕事を選ぶべきですね。

「フリーランス最高」「パラレルワークかっこよさそう」と何も考えずに飛びつくのは間違っている。まずは自分と向き合うことが何よりも大事です!

 

アタラシイヒモノ

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日本の干物を救うため、田村浩二さんが日本人のライフスタイルに寄り添った新しい干物、「ヒモノ2.0」を提案。

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最終更新日
2018.09.20

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