Earth Labでは、ミレニアル世代(1980年〜1999年生まれ)の働き方に関するインタビューをお届けしています。
本業を持ちながら、第2のキャリアを持つ「パラレルキャリア」。インタビュー前編では、つぐりさんがキャリアなしの未経験から、クリエイターとしてどのように活動を広げていったかを紹介しました。
後編では、つぐりさんはなぜクリエイター×パートの働き方を選んだかを紹介します。つぐりさんの働き方は、自分らしく働くためには正社員にならない選択肢もあるんだということを気が付かせてくれます。自分らしく働くための環境作りについて迫ります。
Twitter:つぐり@クリエイティブロガー
自分らしく働くための選択肢がパラレルワークだった
−もともとどんなお仕事をしていたんですか?
最初は大阪で美容師を2年半くらいやっていました。高校を卒業してすぐ大阪の美容室に就職したんですが、8時に出勤して23〜24時に帰る生活。通信の美容専門学校に自分で学費を出して通いながら働いていたのであの時期は貧困を味わいましたね……。ブラックな環境で働く中で体調を崩してしまったので退職しました。当時は電車やバスなどの公共機関を使えなくなるほど心身ともに疲れ切っていて、しばらく滋賀県に居る友人の家にお世話になっていました。
友人の家でお世話になっているときは、カフェとハンコ屋のアルバイトを掛け持ちしていました。生活費を渡したり、自立のための貯金をしたりするためです。環境を変えて働いているうちに少しずつ活力が戻っていきました。
−そこからどのような経緯でパラレルワークを始めましたか?
就職する主人と一緒に暮らすため、滋賀からに大阪に戻ることにしました。結婚が決まっていたので、正社員の仕事は探さずに、アルバイトを掛け持ちして働く生活を続けています。
イラストの仕事を始めたのは、大阪に戻って4年後の2017年からですね。まずはブログを始めました。何かの足しになればと思って。実はイラストの仕事をするつもりはまったくなかったんですよ。むしろライターとしてやっていこうと思っていたぐらいでした。
ある日、ブロガー仲間で「イラストを描ける人がほしい」という話題が出たんです。 自分のイラストを見せたら「それ絶対やった方がいいよ」と言われて、自分の新しい可能性に気付いて。イラストを仕事にしていこうと思ったのはその時です。リサーチして、自分のスキルが活かせることに気が付いたのでどんどん売り出していくことに決めました。

つぐりさんのブログ「tsugurism」
私のブログ(tsugurism)ではイラストのノウハウや働き方に関して発信していて、ポートフォリオも載せています。ブログとTwitterでの情報発信でイラストのお仕事をもらえるようになりました。2017年の10月に初めてイラストの仕事を受注してから本格的にクリエイター×パートのパラレルワークが始まりましたね。
−正社員ではなくパートを選択している理由はなんですか?
自分には一ヶ所で働くのが難しい性質があると思ってて……。一つの仕事にのめり込んでしまうので、自分で仕事の負担を大きくしてしまいます。どうやら「求められている以上に頑張らなくては」と自分を追い込んでしまうみたいですね。
そのため働く場所や仕事、収入などを分散させて、息抜きしながら働いた方が自分にあっていると思いました。それが今の「クリエイター×パート」というワークスタイルにつながっています。
自分で働く環境をコントロールするようになってからは、「一ヶ所ダメなら他の場所に逃げてもいいんだ」と考えられるようになりました。仕事にコントロールされるよりも、自分で仕事をコントロールすることが大切だと思います。
情報発信と仕事管理がパラレルワーク成功の鍵

つぐりさんのオリジナルイラスト。イラストの仕事を受注しながら、自身の作品作りもしている。
−レンタルショップや医療事務、クリエイターの仕事の収入を教えていただけますか?
医療事務とレンタルショップ店員の仕事で16万円ほどで、 イラストなどのクリエイター活動が数万円です。 合わせると普通のOLさんと同じくらいの収入はあると思います。
自分の中では、今一番いい働き方ができていると思っています。ただしフリーランスの働き方に近いので、全てが自己責任です。税金の管理やクライアントとのトラブルの対処などは自分でやらなければなりません。
−パラレルワークをするために必要なことはなんですか?
1つ目は、連絡を取ることでしょうか。クリエイター仲間と話していると、急に連絡が取れなくなって失踪する人がいるとよく聞きます。なんの断りもなく連絡が途絶えると、相手を信用できなくなりますよね。あとは早めのレスポンスも大事だと思います。
2つ目は、時間管理能力です。複数の仕事を掛け持ちする前提のパラレルワークでは、時間配分をミスすると、いろいろなところに迷惑がかかることがあります。自分がいつ働きいつ休むのか……作業時間の見積もりなどを、しっかり行わなければなりません。
3つ目は、できないことを「断ること」です。私はパートという立場で、融通が効く存在。そのため職場の便利屋さんになってしまう可能性があります。医療事務の前はドラックストアで努めていて、正社員並みに働いていましたが、イラストの仕事をする時間もなく、働き方が合わずに辞めたんです。
イラストの仕事を受注する際にも、自分が受けられる量や質を把握しておくことが大事だと思っています。自分のキャパシティを超えて仕事を受けてしまうと、作品の質が落ちますし、最悪納品できない場合もありますからね。
−クリエイター仲間はどうやって作りましたか?
今は2つのグループに入っていますね。Twitterのフォロワーに誘っていただきました。
Slackを使ったクローズドな環境で、悩み相談や注意喚起、情報共有をしています。「こういう事例があったから気をつけてね」とか話したり。あとはTwitterのフォロワーと個人的にDMを送り合っています。
お誘いいただいたり、Twitter のタイムラインに流れてきたのに声をかけることが多いですね。

つぐりさんが瀬戸内ことりさん(@SetouchiKotori)に納品したイラスト。オリジナル作品や仕事で制作したイラストなどをTwitterやブログで公開している。
−誘ってもらうためには何が重要ですか?
誘ってもらうためには、自分に興味を持ってもらうことが一番大事です。自分の作品を公開したり、意見を言ったり自分から情報発信することが重要です。
−興味をどうやって持ってもらうかって悩んでしまう人がいると思うんですけど、どうしたらいいと思いますか?
私も最初は同じ悩みを持っていたので、気持ちはすごく分かります。絵に関してはSNSやブログで公開すれば、興味があると言ってくれる人が現れますし、まずは臆さずに作品を出していきましょう。出さないと何者でもなくなってしまうので……。自分がイラストレーターなら、イラストに関する思いや作品、ノウハウを発信すればいいと思いますよ。
−最後にパラレルワークをするために必要な心構えを教えて下さい。
とにかく続けることが大切です。認知されるのも、稼げるようになるのも時間がかかります。稼げなくて辞めてしまう人は何人もいますが、それでも諦めずに続けたら何かしら成果は残りますから。パラレルワークのいいところは、辞めたかったらいつでも辞められるし、始めたかったらいつでも始められること。まずは始めて、細々とでも続けていきましょう。
また、複数の仕事を同時進行でこなさなければなりませんが、完璧主義は疲れちゃいます。仕事のスケジュールを調整して、余裕を持って取り組める環境を作っていくといいですよ。
自分が自分らしく働ける環境作りが、パラレルワークをするために重要なのではないでしょうか。働きやすい環境や仲間を作りやすい環境を、自分の理想の働き方を実現できるように整えていきましょう。