働き方や価値観が多様化して、自分らしく自由に働ける時代がきています。自分が好きなことを仕事にできれば、楽しく働けるでしょう。本業を持ちながら第2のキャリアを持つパラレルキャリアを実践する人が増えてきています。
今回のインタビューではパラレルワーカーのYukoさんをご紹介。インタビュー前編では、Yukoさんがパラレルワークを始めたきっかけを紹介してきました。後編では、Yukoさんが「絵描き×会社員」としてパラレルワークをするために、どのように働く環境を作ってきたか。どのように二つの仕事を両立して働いているのかを紹介していきます。
ブログ:絵描きのてつがくスケッチ
Twitter:ユーコ/Yuko@絵描き
Instagram:yuko.ohara
絵描きを仕事にするために、最適な環境を探していた
−ロンドンから帰国してから今の外資系の会社員になるまで、3回転職をしているのはなぜですか?
帰国してからは絵の仕事は絶対しようと決めていました。なので、その時その時で必要な環境を求めて転職をしていましたね。
帰国直後は、子ども向けの英会話スクールで講師をやりました。せっかく留学したので英語が使えればと思って。仕事は楽しかったのですが、あいにく激務で体調を崩してしまいました。絵を描く時間も取れなくなってしまったので辞めることにしました。
それで、自分の時間を確保して、健康的に働くために派遣の仕事を選びました。単純なんですけどね。絵を描く時間が取れたことで、次は集中できる環境が欲しくなりまして(笑)当時は実家に戻っていたのですが、自分だけの制作空間を求めて一人暮らしが次の目標になりました。派遣からの収入アップを目指した結果、今の外資系の会社でフルタイムで働いています。
−その間のお金のやりくりは?
ラッキーなことに、意外とすぐ仕事が決まっていたのであまり困りませんでした。貯金も使いましたし、また、多少なりともネットでのグッズ販売の収入もありました。売れない月もありましたけどね。
−絵を書くと言う軸があって、そのために最適な環境を探し続けていたんですね。
そうですね。絵を描く時間と環境、生活できる収入を考えながら選択してきました。
パラレルワークの仕事術
−海外のクライアントにイラストを納品しているそうですが、どうやって仕事を見つけたんですか?
海外で旅をしながら活躍している画家さんからの紹介です。元々その方のクライアントさんで、新しいサービスを企画されていて 『絵本を載せたアプリを作る。動物の絵が描ける人を探している』 と聞きました。動物の絵は得意ですし、絵本を描くのも夢のひとつだったので、すぐに「やりたい!」と連絡をしました。審査があったので、自分の作品集を提出して、OKの返事をもらえたときは嬉しかったです。
長期間のお仕事でしたが無事に納品できました。それが終わったら「こういう企画も出来ますか?」と、次の依頼もいただけました。

Yukoさんは動物の絵を得意にしている|Instagram
−紹介から仕事を掴み取っていったんですね。ちなみにその海外で活躍する画家さんにコンタクトとったきっかけはなんですか?
とにかく情報欲しさで、ネットで調べてたどり着いたのがこの画家さんのサイトでした。今の時代、デジタルは多いですが、手描きのアナログの絵で生きていけるが人いるんだ!と見つけたときは衝撃を受けましたね。それと同時に、希望もみえました。一体どうやっているんだろう?と知りたくて、始めはメールからでした。
−2つの仕事のバランスはどのようにとっていますか?
会社員の仕事がフルタイムなので、絵の仕事にとりかかるのは家に帰ってからです。締切が近いときは、朝5時まで絵を描いてそのまま会社に行く、なんてこともありました。
スケジュール管理は、ふつうですが手帳とgoogleカレンダーでやっています。あとは無駄な残業をなるべくしない努力をしています。基本は定時でお疲れさまでしたー!ですね。外資系の会社なので、残業していないと変な目で見られることも全くないです。
−残業しないコツってありますか?
なんでしょうね。来た仕事はすぐやる・メールもすぐに返す!という感じで、仕事を自分で溜めないことですかね。ギリギリまでためて間違えているよりも、早めに間違いに気づく方がいいので。
−絵を描く時間を確保するために、効率的に仕事をできるようになりそうですね。
それはすごくあると思います。それに2つの仕事のいいところは、職場でイヤなことがあっても「絵の仕事があるから大丈夫」みたいに気持ちの切り替えもうまくできることです。
−絵の仕事のスケジュール管理はどのように行っていますか?
1つの作業にどれくらい時間がかかったのかをできるだけメモしています。「アイデア出し」に何分、「下書き」に何分、「本書き」に何分など細かく。
新しいお仕事の話を頂いたときに、いついつ迄の締切りで出来ます。と答えられるように心がけていますね。
−制作の工程を分解しているんですね 制作物のクオリティとスピードのバランスはどうとっていますか?

Yukoさんのオリジナル作品。2017年のデザインフェスタに出品している。|Instagram
クライアントさんがいる制作物は、いくら自分が良いと思っても相手が良しとしなければダメですよね。イラストは各段階で見せて、フィードバックをもらいます。自分が良いと思っていたカットではなく、別のカットが選ばれることもありますし。自分だけの思い込みで時間をかけて、ここまでやったぞ、完成!とならないように小まめにコミュニケーションを取るようにしています。ただ、自分だけの展示作品だと、額に入れるギリギリまで手直しします(笑)
「好き」を軸に積極的に行動することが大事
−好きを仕事にするコツはなんですか?
自分がやれることはすぐやること、やりたいって思ったことはやってみることかなと思います。あとは、必要な情報はどんどん手を伸ばして取りにいくようにしています。そのために人に会うとか、セミナーに参加するとか、とにかくやりたいことにはお金も時間も惜しまずに使うことです!
ただ、うまくいかない時期に気が付いたことがあるのですが……情報を集めすぎると、情報に溺れるというか。マネタイズしなきゃとか考えすぎて方向性がブレそうになったりするんですよね。そのときには、自分が何をやりたかったのか、自分が好きって思うものが何だったか、原点に戻るようにしています。
−どのように方向性がぶれたんですか?
例えば「アーティストとして情報発信が必要だ」と、一生懸命やりますよね。そのためにブログ作りの情報を集め始めるんですけど、やっぱり詳しいことが載ってるブロガーさんのハウツー記事をよく見るようになるんですよね。
そうすると、「あれ? わたしブロガーじゃないのに何をやってるんだろう」って思うんですよ。絵よりブログに時間をかけちゃおかしいだろうって、ブレてることに気がつきました。
−絵の仕事のマネタイズはどう考えていますか?
マネタイズにあんまりこだわって……ないんですよね。絵を描いて、絵が描けることが何に変わるのかな? ということをベースに考えるようにしています。
最近アトリエのボランティアスタッフをやり始めまして。障がいのある子どもたちが集まるアトリエ教室で絵を教えるというか、一緒に楽しく描いています。それって、絵が描ける自分にできることだなって。子どもたちが喜んでいる顔を見ていると、とても嬉しくなります。もちろんボランティアなのでお金にはなることではないんですが。
お金稼がなきゃって思っていた時期もありました。だけど、すごいワガママなだけなんですけど、クラウドソーシングとかで並んだ案件を見ても、「この案件やりたくないしなぁ。その時間より自分の絵を描きたい」と思っちゃいます。これはパラレルワークだからできることだと思うんです。今はそのほうが心にゆとりができますね。
−この先は絵描き一本で生きていきたいって思いはありますか?
それはできたら最高ですね!ただ、それにこだわりすぎて方向性がブレるよりかは、自分のペースでやっていきたいという思いが強いです。あまり人と比べないようにしています。自分のペースで絵を描いて行こうと思っています。
−10月にイベントをやるんですよね、どんなイベントですか?
10月の連休に向けて、グループ展をやろうとしています。Tokyo Artist League of Life Drawingというデッサン会をやっているグループで、今年の3月にもギャラリーで作品の展示を行いました。
−いろいろなつながりがあるんですね。つながりってパラレルワークを続けるモチベーションにつながっていくと思うんですけど、どうやって作っていくんですか?
そうですね、つながりはとても大事ですね。待っていても何も変わらないので、まずは自分から行動を起こすしかないと思います。気になる人やイベントなど、今はネットでいくらでも見つかります。見つけたら行ってみる、やってみる、ということの積み重ねで気づいたら前に進んでいるのだと思います。
インタビュー後編では絵描き×会社員のパラレルワーカーのYukoさんに、働き方やパラレルワークを続けるために必要なことを紹介しました。自分の「好き」を仕事にするためには、環境作りと仲間作りが大切です。好きな仕事を始めたい人はぜひ、勇気を持って挑戦してみて下さい。