自分らしく働く
2018.09.29

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違いとメリット・デメリットを解説

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BY 川村大和

ジョブ型雇用とは仕事に人を割り当てる雇用の形です。一方、メンバーシップ型雇用は人に仕事を割り当てる雇用の形です。欧米諸国ではジョブ型雇用が主流で、メンバーシップ型雇用をしているのは実は日本のみ。それぞれにメリット・デメリットはあります。日本は働き方改革を進めていますが、メンバーシップ型雇用が改革の妨げになるという議論もあります。

今回は欧米型のジョブ型雇用と日本型のメンバーシップ雇用の特徴やそれぞれのメリット・デメリットを紹介していきます。

ジョブ型雇用とは

ジョブ型雇用を簡潔に説明すると「仕事に人を割り当てる雇用の形」といえます。日本以外の多くの国で採用されている雇用方法で、以下のような特徴があります。

ジョブ型雇用の特徴
職務 職務や勤務地が限定されている
採用 欠員補充時に募集をかける
雇用保障 弱い
給料 職務によって決まる=職務給
教育 社内教育は少ない

ジョブ型雇用では、「ジョブディスクリプション(職務記述書)」で職務や勤務地、労働時間などを明確に定めて雇用契約を結びます。労働者は、ジョブディスクリプションに書かれていない命令に従う義務はありません。例えば、転勤や職務の変更、残業などです。

労働者は、特定の仕事(ジョブ)を得るという意識で働いています。また、給料は職務の内容によって定められています。職務が限定されているので所属している会社でのキャリアアップや昇給は滅多にありません。そのため一つの会社で3年ほど働いたらキャリアアップのために転職。人材の流動性が高くなる特徴があります。

日本ではチームワークを支えるソフトウェアを提供するサイボウズ株式会社やヘアカット専門店QBハウスを運営するキュービーネットホールディングス株式会社などがジョブ型雇用を取り入れています。

ジョブ型雇用の5つのメリット

ジョブ型雇用には以下の5つのメリットがあります。

  • 自分の能力を活かし、深められる
  • スキルや経験で給料が決まる
  • 新鮮な経験や考え方の取り入れ
  • 長時間労働になりにくい
  • 欠員が出た際に最適な人材を確保しやすい

それぞれ解説していきます。

ジョブ型雇用のメリット1:自分の能力を活かし、深められる

ジョブ型雇用ではすでに仕事があり、その職務を遂行できる人が採用されます。働く人のスキルと仕事内容とにミスマッチが生じません。そのため、自分の能力を最大限に活かして仕事に取り組めます。また、契約上仕事内容が固定されているので、自分が希望しない仕事を命じられることはありません。仕事の専門性を深めてその道のスペシャリストになれます。

ジョブ型雇用のメリット2:スキルや経験で給料が決まる

給料は職務の難易度や成果に応じて決まります。つまり経験豊富でスキルがあって結果を残せる人ほど高収入を得られます。職務を遂行できる能力さえあれば、若くても重要な仕事に就けます。

ジョブ型雇用のメリット3:新鮮な経験や考え方の取り入れ

人材の流動性が高いので、会社にいる人の顔ぶれが頻繁に変化します。多様な経歴を持つ人材と出会える環境になっています。人との出会いの中で、新しい考え方に触れて面白いアイデアが生まれるかも知れません。

ジョブ型雇用のメリット4:長時間労働になりにくい

ジョブディスクリプション(職務記述書)で労働条件が詳細に決まっています。労働者は、契約にない残業や業務、転勤をする義務はありません。そのため個人の仕事の範囲が明確です。仕事をどんどん任されて長時間労働になってしまうことはないでしょう。

仕事でアウトプットが出ていれば、企業は労働時間や休暇の取得を労働者に任せる傾向があります。

ジョブ型雇用のメリット5:欠員が出た際に最適な人材を確保しやすい

ジョブ型雇用では、仕事に必要な能力を持った人材を必要なタイミングで募集します。職務や勤務地など募集の条件が限定されているので、求める人材に出会いやすくなるメリットがあります。

これは企業側のメリットです。しかし裏を返せば、「自分にマッチした仕事や会社を見つけやすい」という求職者側のメリットにもなるでしょう。

ジョブ型雇用の5つのデメリット

ジョブ型雇用には以下の5つのデメリットがあります。

  • 職場内でのキャリアップが難しい
  • 職務がなくなった際に、解雇されやすい
  • スキルアップは自分次第
  • 新卒者は仕事を得にくい
  • 契約にない仕事を依頼するのは難しい

それぞれ解説していきます。

ジョブ型雇用のデメリット1:職場内でのキャリアップが難しい

ジョブディスクリプション(職務記述書)によって与えられている仕事が決まっています。そのため、自発的な行動を起こさなければ延々と同じ仕事を続けることになります。

職場内でのキャリアアップは、自分がスキルアップした際にちょうどよくポストが空いていなければ実現できないでしょう。そのため、キャリアアップの手段は転職です。欧米では転職を重ねている人のほうが優秀な人材だと評価されます。一つの場所にとどまらず、キャリアアップに貪欲な人とみなされるからでしょう。

ジョブ型雇用のデメリット2:職務がなくなった際に、解雇されやすい

会社の方針転換や経済状況が変化した際に、契約終了になる可能性が高いです。ジョブ型雇用では職務範囲と勤務場所が限定されているためです。企業には労働者に新しい仕事を用意する義務はありません。

また、与えられた職務で期待されている成果を残せない場合は、能力不足として解雇されることもあります。

ジョブ型雇用のデメリット3:スキルアップは自分次第

ジョブ型雇用では、仕事を遂行できる能力を持った人を採用します。そのため社内では、ほとんどトレーニングや教育を行いません。労働者は社外で主体的にスキルアップの努力をしなければなりません。

ジョブ型雇用では特にスキルの専門性が問われます。そのため、常に自己研鑽を続ける必要があります。

ジョブ型雇用のデメリット4:新卒者は仕事を得にくい

ジョブ型雇用で採用募集を出す目的は、欠員の補充です。新卒採用はありません。管理職でもない限り職歴が問われることはないと言っていいでしょう。求められるのは職務を遂行できる専門的なスキルや能力です。

就職の際に自分ができることをアピールできなければ希望する仕事には就けません。学生は自分の能力をアピールするために、インターンや職業訓練で能力を磨くのです。

ジョブ型雇用のデメリット5:契約にない仕事を依頼するのは難しい

ジョブディスクリプション(職務記述書)に記載されていない仕事を、企業が労働者に依頼するのは難しいでしょう。契約範囲外の依頼だからです。労働者は自分の担当外の仕事は「それは私の仕事ではない」と言って断ります。

社員の急病や急な退職などで欠員が出た場合は、代替要員を確保できるまで仕事が止まってしまいます。

メンバーシップ型雇用とは

メンバーシップ型雇用を簡単に説明すると「人に仕事を割り当てる雇用の形」といえるでしょう。日本特有の「年功序列」や「終身雇用」、「新卒一括採用」など制度が前提の雇用方法です。以下のような特徴があります。

メンバーシップ型雇用の特徴
職務 職務や勤務地などは限定されない
採用 新卒一括採用や定期採用
雇用保障 強い
給料 職務遂行能力によって決まる=職能給、年功によって昇進がある
教育 OJTや研修など社内教育が多い

メンバーシップ型雇用では、専門知識を持っていない新卒の学生を雇用します。社内研修やOJT(On the Job Trainig)を行い、仕事に必要な技能を身につけさせます。

職務範囲や労働時間、勤務地は限定されていません。会社が転勤や残業を命じれば、労働者は従わなければなりません。

「メンバーシップ型」は、労働政策研究・研修機構の労働政策研究所長・濱口桂一郎氏が提唱した概念です。海外では「フルタイム」「無期契約」「直接雇用」の3条件を満たせば、正規労働者として扱われます。しかし日本では正社員になるためにはこの3要件に加えて、もう一つの条件を満たさなければなりません。2007年のパート改正法で定義されています。

(前略)当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者(※)の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるもの

出典:パートタイム労働法9条|パートタイム労働法について

※通常の労働者=正社員の法律用語

日本で正社員になるためには「職務の内容及び配置の変更」という条件も満たさなければなりません。濱口氏は、このような雇用のあり方をメンバーシップ型と定義就けています。

職務も労働時間も勤務場所も契約で限定されておらず、無限定、すなわち使用者の命令でいくらでも変えられてしまう雇用のあり方を、企業という「共同体」のメンバーになるという意味で「メンバーシップ型」と呼び、日本以外で一般的な職務も労働時間も勤務場所も限定される「ジョブ型」と対比した。

出典:2014年(いま)を理解するためのキーワード:ジョブ型正社員|hamachanの労働法政策研究室

メンバーシップ型雇用の3つのメリット

メンバーシップ型雇用には以下の3つのメリットがあります。

  • 雇用が安定している
  • 手厚い教育を受けられる
  • 職能によって給料が支払われる

それぞれ解説していきます。

メンバーシップ型雇用のメリット1:雇用が安定している

メンバーシップ型雇用では、職務の範囲の取り決めはありません。ある業務がなくなる場合、その業務の担当者は配置転換の後、他の仕事を任されます。業務がなければ即解雇ということはありません。

メンバーシップ型雇用のメリット2:手厚い教育を受けられる

労働者は、社内研修やOJTなど、手厚い教育を受けられます。「終身雇用」が前提なので、企業は従業員を育てる意識を持っています。新卒入社のための研修や、中堅社員にスキルアップのための研修など、長い期間をかけて会社を支える人材を育成します。

メンバーシップ型雇用のメリット3:職能によって給料が支払われる

職務遂行能力を基準に給料が支払われる「職能給」が特徴です。仕事に必要な能力(知識や経験、技術、資格など)や、リーダーシップ、チームワークなどのコミュニケーション能力などが職務遂行能力です。

メンバーシップ型雇用では、職能は勤続年数が長くなれば向上すると考えられています。そのため年功に応じて給料が上がっていきます。

メンバーシップ型雇用のデメリット

メンバーシップ型雇用には2つのデメリットがあります。

  • 会社都合の転勤や転属、残業がある
  • 「年功序列」や「終身雇用」などの前提条件が揺らいでいる

それぞれ説明していきます。

メンバーシップ型雇用のデメリット1:会社都合の転勤や転属、残業がある

仕事内容、勤務地、働く時間に明確な取り決めはありません。残業や転勤、部署異動などの職務命令に従業員は従わなければなりません。

仕事の範囲が明確に決まっていないので、長時間労働につながりやすい環境が生まれてしまいます。

メンバーシップ型雇用のデメリット2:「年功序列」や「終身雇用」などの前提条件が揺らいでいる

メンバーシップ型雇用では、従業員は会社の転勤や残業などの命令に従わなければなりません。しかし、それでも長年メンバーシップ型雇用が続いてきました。「年功序列」で昇進や昇給があり、「終身雇用」で長期間の雇用が約束されていたからでしょう。

しかし、すでに終身雇用や年功序列の制度は崩壊が始まっています。明確なキャリア戦略を立てられていないと、リストラの憂き目にあうかもしれません。

雇用や昇給が約束されなくなったメンバーシップ型雇用は、いずれ新たな雇用システムに取って変えられるでしょう。

メンバーシップ型雇用が働き方改革を妨げている?

メンバーシップ型雇用が働き方改革を妨げているという意見もあります。長時間労働を是正することはもちろん、生産性の向上が働き方改革には必要です。

生産性を上げて企業の新陳代謝を高めるためには、成果を出せない従業員を解雇することも求められるでしょう。

しかし、メンバーシップ雇用では、労働法によって従業員は手厚く保護されています。現状は、合理的で正当な理由がなければ、企業は従業員を解雇できません。

ジョブ型・メンバーシップ型の次に来る新しい形

ジョブ型やメンバーシップ型の雇用について紹介してきました。時代の変化やテクノロジーの進化によって、働き方や価値観が多様化しています。その結果、ジョブ型、メンバーシップ型に次ぐ新しい形が模索されています。

ジョブ型正社員

メンバーシップ型雇用の問題点を解決するために「ジョブ型正社員」の導入が進んでいます。政府の規制改革推進会議の2017年の公開ディスカッションの資料によると、ジョブ型正社員は以下のように定義されています。

 「ジョブ型正社員」とは、職務、勤務地、労働時間のいずれかの要素(又は複数の要素)が限定されている正社員のこと。

出典:5問で分かる「ジョブ型正社員」|内閣府

(※ジョブ型正社員に対して、一般的な正社員は無限定正社員と呼ばれています。)

ジョブ型正社員は以下のような人たちのニーズを解決しています。

  • 専門スキルを活かして働きたい人
  • 専門スキルを磨きづつけたい人
  • 転勤をしたくない人
  • 子育てをしながら働きたい人

三井住友海上火災や東京急行電鉄、フィットネスクラブを運営するルネサンスなどが積極的に取り入れています。

タスク型雇用

労働政策研究所長の濱口氏は、ジョブ型やメンバーシップ型の次に来るのはタスク型と主張しています。Recruit Works Instituteのインタビューで以下のように述べています。

プラットフォーム・エコノミーに代表されるように情報通信技術が発達し、ジョブ型雇用でなくともスポット的に人を使えば物事が回るのではないかという声が急激に浮上している。私はそれを「ジョブからタスクへ」と呼んでいます。

出典:メンバーシップ型・ジョブ型の「次」の模索が始まっている|Recruit Works Institute

アメリカでは今まさにジョブからタスクへの変遷が起こっています。タクシーとUberの例を上げると分かりやすいでしょう。

アメリカでタクシーと言えばイエローキャブを連想するのではないでしょうか? タクシーの運転手になるためには営業許可証(メダリオン)が必要でした。資格が必要なジョブとしてタクシー運転手は成立していました。しかし配車プラットフォームUberがジョブをタスクに変えてしまいました。

ジョブがなくなっても仕事がなくなるわけではありません。(中略)運転して人を運ぶというタスク自体は変わらなくてもウーバー型になればタクシードライバーというジョブがなくなる。ジョブからタスクへの典型的なイメージがそれです。

出典:メンバーシップ型・ジョブ型の「次」の模索が始まっている|Recruit Works Institute

タスク型が広がっていくと、プラットフォームの創造者とプラットフォームを利用する労働者に2分化されるかもしれません。

ホラクラシー

ホラクラシーとは役職や肩書、上司・部下などの関係が存在しないフラットな組織の形です。中央集権型のヒエラルキーとは真逆な考え方をしています。

アメリカではEC企業ザッポスやアウトドアウェアを販売するパタゴニアがホラクラシ―を導入しています。日本では求人メディアGreenを運営するアトラエや納品のない受託開発を提唱するソニックガーデンなどが導入しています。

 

 

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用、そして新しく生まれる雇用の形を紹介してきました。日本ではまだまだメンバーシップ型雇用が根強いです。

しかし、年功序列や終身雇用制度が保てなくなっているので、雇用の形は変わっていくはずです。これからの仕事では、スキルの専門性や、仕事の成果をより強く求められるのではないでしょうか。企業で得た知識だけで勝負するのではなく、自らスキルアップをして準備しましょう。

最終更新日
2018.09.28

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