「副業をしたいけど、会社にはバレたくない」と考えている人は多いのではないでしょうか。源泉徴収や確定申告といった用語の解説から、副業時に気をつけるべき点までご紹介します。税金を正確に理解し、後で困らないようにしましょう。
目次
まだまだ副業NGの企業は多い
2018年に入り、複数の大手企業が副業を解禁しています。「働き方改革」に伴い、副業を許可する企業の数は今後も増えると予想されます。しかし、現状はまだまだ副業をNGとしている企業が大多数です。株式会社マクロミルが2018年10月9日に発表した「〜正社員1000人に聞く〜副業に関する調査」によると、副業を認めている企業は全体の2割にも満たないそうです。
なぜだめなのか? 企業の心配事は情報セキュリティと本業との両立
企業が副業を認めない理由として、「情報セキュリティ」「従業員が本業と副業を両立できるか」という2つの懸念点が考えられます。企業は、副業をしている社員がさまざまな会社の人と付き合うようになり、自社の社外秘情報をうっかり漏らしてしまわないか懸念しているようです。加えて、副業により社員の労働時間が増え、本業に支障がでるのではないか、と考えています。セキュリティは、副業が許可されている企業でも気にすべき点。本業で知り得た情報の使い方を間違えてしまうと、懲戒処分を受ける可能性があるので、注意しましょう。
「副業をしたい」なら税金を理解しよう
7割以上の企業が副業を認めていないものの、副業をしたい人はたくさんいます。マクロミルの同調査によると、44%の正社員が副業を始めたいと考えています。
副業を始める前には、税金に関する事柄を理解してから始めるようにしましょう。副業と同じような文脈で使われるパラレルワークという働き方があります。副業とパラレルワークは、複数個の仕事をする目的が異なりますが、仕事を掛け持つ点では同様です。以下の記事のパラレルワークの注意点も参考にしてみてください。
源泉徴収と年末調整についてまず知ろう
本業以外で収入を得る前に、ますは源泉徴収、年末調整について正しく理解しましょう。本章では、源泉徴収と年末徴収の用語を解説します。さらに、自分が源泉徴収と年末調整に関して何をしたらいいのかを説明します。
源泉徴収とは
源泉徴収とは、給与や報酬を支払う者が、所得を受け取る者に代わり国に納税する仕組みをいいます。私たち国民には、所得に応じて所得税を国に納める義務があります。日本は申告納税制度を取り入れているので、個人で税務署に所得を申告し、必要な納税額を納めます。しかし、国民一人ひとりが税務署に申告に行くとなると、税務署内の大混雑が予想されます。また、税務署側としてもまとめる作業に膨大な時間がかかってしまうでしょう。
国民と税務署間の混乱を避けるために採用されているのが、源泉徴収制度です。会社があらかじめ社員の所得税を差し引き、個人に代わって源泉所得税として国に納税をします。会社からの給与明細をみると、「所得税」の欄があり、支給額からいくらか引かれているはずです。
年末調整とは
年末調整とは、会社または個人で納めた所得税の支払い過不足を調整する手続きです。所得税の納税は、源泉徴収制度を通じて毎月行います。しかし、毎月の所得から算出された所得税額と、1年間の合計所得から計算された納税すべき所得税額は、多くの場合異なります。理由は、副業分の所得が源泉徴収されていなかったり、生命保険に加入したりなど、人それぞれです。支払いすぎた分があれば還付手続きをし、支払いが足りない場合は国から徴収を受けます。
会社員であれば、11月頃から企業が年末調整を行ってくれます。過不足があれば年末の給与で差し引きを行うので、個人で年末調整をする必要はありません。
確定申告をすべき人、しなくていい人
確定申告とは、納税金額の過不足を清算する手続きです。毎年2月〜3月の間が確定申告の手続き期間です。
年末調整で、過不足分が給与で調整・清算された人は確定申告の必要がありません。副業を行っていると、企業の管理分以外に収入があるので、過不足が正しく計算されません。税務署に行き、自身の総所得を申告し、正しい納税額の通知を受ける必要があります。この手続きを確定申告といいます。全ての副業者が確定申告をしなければいけない訳ではありません。確定申告の対象者と非対象者を説明します。自分はどちらに当てはまるか確認してみましょう。
確定申告が必要な副業会社員とは?
企業で年末調整が済んでいても、副業の収入が20万円以上ある場合は、確定申告が必要です。確定申告を行う場合は、本業と副業の源泉徴収票や支払調書を持って税務署に行きましょう。
- 1年間の収入が2,000万円以上の人
- 給与を1ヶ所から受け取り、給与や退職金以外の所得が20万円以上の人
- 給与を2ヶ所以上から受け取り、年末調整を受けた所得と、給与や退職金以外の所得の合計が20万円以上の人
参考:給与所得者の確定申告|国税庁
給与や退職金以外の所得とは、事業所得もしくは雑所得に当てはまります。
- 事業所得 … 事業を営んでいる場合、その事業から得られた所得
- 雑所得 … アフィリエイトや講演料、原稿料、ビットコインでの利益など
講演開催や原稿執筆を自身の事業として収入を得ている場合は、雑所得ではなく事業所得に当たります。
事業所得・雑所得は、総収入額から必要経費を引いて算出します。必要経費とは、該当する所得を得るために掛かった費用。アフィリエイトを行うために購入したPC代、レンタルサーバ代といった費用が当てはまります。必要経費を正しく計上することは、正しい納税額を計算するために不可欠なステップです。国税庁による注意事項を参考に、確定申告の前に必要経費をまとめてみましょう。
確定申告が不要な副業会社員とは?
副業での収入が20万円未満の人であれば、確定申告は必要ありません。しかし、住民税の申請は必要です。各都道府県、市区町村の役所に行きましょう。住民税の手続きを忘れてしまうと、副業がバレる可能性が高くなってしまいます。住民税については、次章で詳しく述べます。
- 給与を1ヶ所から受け取り、給与や退職金以外の所得が20万円未満の人
- 給与を2ヶ所以上から受け取り、年末調整を受けた所得(=本業の給与)と、給与や退職金以外の所得の合計が20万円未満の人
- 収入合計額が150万円以下かつ給与や退職金以外の所得が20万円未満の人
参考:給与所得者の確定申告|国税庁
副業で20万円以上を稼いでいて、「副業でも、特定の企業に所属しているから年末調整をやってくれるし、確定申告はいらないだろう」と考えている人は要注意です。副業として勤めている企業でも源泉徴収は行ってくれますが、年末調整は行いません。原則として、年末調整を行うのは主たる給与を支払っている企業のみです。副業として勤めている企業からは、年明けに源泉徴収票が送付されます。本業、副業の源泉徴収票や支払調書を持って確定申告に行きましょう。
副業がバレないためにやるべきこと2つ
とにかく副業をしている事実を周りに知られなくない、という人は住民税とSNSに気をつけましょう。住民税の納め方と、SNSを含むネットの使い方について注意点を解説します。
1. 住民税を普通徴収に切り替える
住民税とは、居住している都道府県・市区町村もしくは会社がある都道府県・市区町村に納める税金です。住民税は、均等割と所得割で構成されています。
均等割とは、所得に関係なく、自治体によって定められた納税額をさします。一方、所得割とは、前年分の合計所得額を基に算出されます。所得参照年の翌年の5月に確定し、6月〜翌々年5月の1年間で納税します。各都道府県、市区町村が住民税を管理しています。確定申告をしていれば、税務署が各都道府県、市区町村に前年の所得を通知してくれるため、個人が住民税のために役所に行く必要はありません。
私たちが住民税を納税する方法は2種類あります。特別徴収と普通徴収です。企業が給与から天引き、個人に代わって納税をしている場合は特別徴収にあたります。自分自身で税務署に納める場合は、普通徴収です。
基本的に、企業に勤めていれば特別徴収で納税をしています。企業は社員の税金に関して一括して管理をしているので、自分だけ特別徴収を普通徴収に切り替えることは出来ません。副業で得た収入に関しては、給与または退職金以外であれば税務署または市区町村の役所に届け出れば普通徴収に切り替えて納税出来ます。
副業で、給与または退職金以外の収入20万円を超えている人は、確定申告の際に普通徴収の選択が出来ます。確定申告の用紙に、「給与から天引き(=特別徴収)」もしくは「自分で納付(=普通徴収)」を選択する箇所があります。自分で納付、を選択しましょう。

出典:住民税に関する事項を記入する|国税庁
副業で、給与または退職金以外の収入が20万円を超えていない人は、市区町村の役所で対応をしてもらいましょう。
副業での収入も「給与」にあたる場合、それぞれで差引きしてもらえるのではなく本業の会社でまとめて特別徴収が行われます。バレてしまうと覚悟をした方が良いでしょう。「副業の収入をなかったことにして、確定申告をしなければバレないのでは? 」と思いつくかもしれません。それは、脱税に当たるので止めましょう。
2. SNSに気をつける
会社にバレてしまう理由として、SNSで別の社員に知られたのがきっかけで上司まで広まってしまうケースが考えられます。匿名でSNSやブログをしていても、バレてしまうものです。「金融企業勤め(26)」のように曖昧にしたつもりでも、趣味や出没エリア、性別などで特定が可能です。ネット上に副業に関する情報を載せる場合は、充分に注意しましょう。案外、SNS関連は税務関連よりも気をつけるべきかもしれません。
副業で起業する人もいる! 週末起業に必要な手続き
週末起業とは、週末だけ個人事業主として活動をすることをさします。コンサルタント、カウンセラーといった勤務時間の調整がきく職業で週末起業をする人が多いようです。
副業で週末起業をする場合に必要な手続きがあります。開業届と青色申告承認申請書について説明します。
開業届
開業届の正式名称は「個人事業の開廃業届出書」です。個人で事業を始める時、辞める時に税務署に提出する資料です。
新たに事業を開始したとき、事業用の事務所・事業所を新設、増設、移転、廃止したとき又は事業を廃止したときの手続です。
出典:[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁
開業届の提出により、税務署から税金に関するお知らせが届くようになります。開業届の提出をしなくても罰則はありません。とはいえ、「出さなければ、事業が知られないから税金を納めなくていい」という訳ではありません。開業届を提出するメリットは、青色申告承認申請書が出せる点です。青色申告承認申請書によって、節税が可能です。
青色申告承認申請書
事業を始めた個人は、事業における所得税の手続きが必要です。白色申告承認申請書(以下、白色申告)または青色申告承認申請書(以下、青色申告)を用いて手続きを行います。
白色申告承認申請書 | 青色申告承認書 | |
メリット |
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デメリット |
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白色申告と青色申告のメリットを比べれば、どちらが得か一目瞭然です。青色申告を行う条件は、確定申告時期(2月中旬〜3月中旬)の前年3月15日までに申請をした場合、と決められています。「2019年の所得は青色申告で手続きをしたい! 」と思ったら、2109年3月15日までに申請書を提出しなければいけないという訳です。
3月15日以降に開業した人は、青色申告が提出できないのかと思うでしょうが、そういう訳ではありません。青色申告は、開業届と合わせての提出も可能です。そのため、事業を始めた際は開業届を提出すべきなのです。
100%バレないわけではない
住民税やSNSなどを考慮していても、会社にバレてしまう可能性がなくなる訳ではありません。本業でのルールが厳しい場合、年間の副業での所得を20万円未満にしておくと、確定申告の必要がないので問題ないでしょう。 ですが、役所仕事も完璧ではありません。普通徴収にしたのに、役所が処理を忘れて特別徴収になったまま、ということもなきにしもあらずです。副業がバレて解雇に至った、という事態に陥るのは避けたいですね。退職金がもらえないかもしれません。
マイナンバーは副業に関係ない
マイナンバー制度が導入されたため、「マイナンバーが理由で副業をしているとバレるのではないか」と不安に感じる人がいるでしょう。マイナンバーを勤め先に教えたからといって、副業がバレる訳ではありません。
マイナンバーは、マイナンバー法第 9 条において、限定的に定められた事務の範囲内で、具体的な利用目的を特定して利用することができます。 原則として、それ以外で利用することはできません。
参照:マイナンバー(個人番号)ハンドブック(p.10)|個人情報保護委員会
マイナンバーは法律で使用用途が社会保障や税金関連、災害対策に限られています。勤め先が、あなたのマイナンバーを利用して納税状況を確認するという使い方はできません。もし勤め先からマイナンバーの提供を求められたら、特別な理由がない限り提供しましょう。
いかがでしたか。難しそうに感じる税金関連の知識ですが、一度理解すれば、その後ずっと役に立ちます。確定申告と住民税、そしてSNSの活用は充分考慮する必要があります。100%バレない確証はありませんが、自分でコントロールできる範囲で副業を検討してみましょう。