日本では、近年ようやく「転職は当たり前」という風潮になってきました。また、政府主導の働き方改革や休み方改革などのように、働き方やキャリアに関する議論が注目されています。本記事では「スラッシュキャリア」の考え方や築き方を紹介します。スラッシュキャリアとは、複数のスキルや経歴、肩書きを持つこと。副業に近い意味合いです。しかし、スラッシュキャリアを築く目的は副業の目的と大きく異なります。
スラッシュキャリアは、ミレニアル世代(1980〜1999年生まれ)のような、若い世代にはすでに浸透している考え方です。ミレニアル世代を部下に持つ人はぜひスラッシュキャリアについて知っておきましょう。
目次
スラッシュキャリアとは
「スラッシュキャリア」は、2007年にアメリカの作家、ジャーナリストであるMarci Alboher氏が著書「One person/multiple careers : a new model for work/life success」の中で生み出した言葉です。
スラッシュキャリアの意味は、1つの分野やスキルでキャリア形成するのではなく、複数のスキルや経歴、肩書きを組み合わせてキャリア形成することです。名刺やSNSのプロフィールに記載するときに、複数の肩書きをスラッシュ(/)で繋ぎ合わせて表現することからスラッシュキャリアと名付けられました。
ちなみに、スラッシュキャリアを実践している人を「スラッシャー」といいます。
私(ライターくぼす)はスラッシャーです。私の経歴は以下のように表現できます。
IT/組み込みエンジニア/ライター/音響心理学
スラッシュキャリアを実践すれば、複数の経験を組み合わせることで新しい価値を生み出せると期待されています。本章では、スラッシュキャリアがなぜ注目されるのか、パラレルキャリアにどう繋がるのかを解説します。
スラッシュキャリアがなぜ注目されるのか
スラッシュキャリアの考え方は、「副業」が持つ悪いイメージを払拭できるとして注目を集めています。
「副業」と聞くと、以下のような内容を思い浮かべる人が多いでしょう。
- 本業がメイン、副業はサブ
- お小遣い稼ぎ
- 本業の稼ぎが少ないからやる
全体的に、ネガティブなイメージが漂っています。
一方で、スラッシュキャリアは複数の肩書きや経験を持つと、本業や他の仕事に良い影響を与えられるとして、ポジティブなイメージで捉えられています。スラッシュキャリアの良い影響の例を以下に挙げます。
- 多様性が身に付く
- 人脈が広がる
- 仕事を得やすくなる
Earth Labでインタビューさせていただいたお笑いコンビ、プーケットマーケットのいのうちさんは、「芸人/プログラマ」のスラッシャーでもあります。芸人として活動していくうちに知り合った人の繋がりで、プログラム作成の仕事をもらえたことがあるそうです。スラッシュキャリアを活かした働き方ができていますね。
スラッシュキャリアとパラレルキャリアは相互作用する
スラッシュキャリアを実現すればパラレルキャリアが実現しやすくなるし、その逆も言えます。
本業を持ちながらも、第2のキャリアを持つこと。第2のキャリアは、収入の有無を問わない。
パラレルキャリアを実践すると、本業と第2のキャリアそれぞれでスキルや経験を得られます。名刺に書く肩書きやスキルが増え、自然とスラッシャーになれるでしょう。
また、スラッシュキャリアを実現するためにスクールに通ったとしましょう。習得したスキルを提示すれば、本業以外の仕事を得やすくなり、パラレルキャリアの実現に繋がります。
つまり、スラッシュキャリアとパラレルキャリアは相互作用するのです。
スラッシャーになるために注意すべきこと
スラッシュキャリアを実現するためには、以下の方法が考えられます。
- 副業をする
- セミナーや勉強会に通う
- ボランティア活動をする
本章では、本業で会社に所属している人が副業やボランティアをする際に注意すべきことを紹介します。
会社の就業規則を確認する
就業規則に「副業禁止」を明記している企業がたくさんあるでしょう。収入が無いボランティアでも禁止している企業があります。企業の情報漏洩を防ぐためです。就業規則に違反してしまったら、本業を失いかねません。
2018年1月、厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を発表しました。現状は「多くの企業では、副業・兼業を認めていない」と記した上で、企業は「裁判例を踏まえれば、原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当である」と述べています。
また、同じく2018年1月に厚生労働省が改訂・公開した「モデル就業規則」から、「許可なく他の会社の業務に従事しないこと」という副業禁止規定が削除されました。
モデル就業規則から副業禁止規定が削除されたことで、今後多くの企業が就業規則から副業禁止規定を削除するでしょう。
これからスラッシャーになるなら、戦略が必要
肩書きを増やすために、とりあえず何か副業やボランティア活動をやってみるのもありでしょう。もしビジネスに活かしたいなら、戦略的にスキルや経験を増やすことをおすすめします。
本章では、どのように戦略を考えればよいかを紹介します。
市場価値からスキル・経験を選ぶ
付け加えたいスキル・経験が市場価値が高いかどうかを考えましょう。
例えば、私の肩書きである「ライター」。文章を書くことが主な仕事であるため、特殊な技能は必要としません。加えて、クラウドソーシングの広まりにより、ライティング未経験者でもライターとして簡単に仕事の受注ができるようになりました。
ライターの数は非常に多く、自分の能力の高さをアピールするのが困難です。名刺にスラッシュキャリアを並べても他の人との差別化が図れません。
ただ、この「ライター」に何を組み合わせれば唯一無二のキャリアになるかを考えるのです。また、市場価値の高いスキルや経験を組み合わせるとベターです。
たとえば、「ライター/AIアナリスト」。パッと見て、AIに詳しいことが分かりますね。AIは今最も人気の高いテクノロジーと言っても過言ではありません。需要が多く、かつAIに関するWebメディアや雑誌はたくさんあります。そういったメディアに寄稿を頼まれるかもしれません。
SNS活用で自分をアピール
スラッシャーになれたなら、自分のスラッシュキャリアをアピールした方がいいです。手っ取り早くアピールできるのは、SNSです。ミレニアル世代は、Twitter・Instagramをよく利用しているので、その2つをまず使ってみましょう。
Earth Labでは、パラレルワーカー(パラレルキャリアを実践している人)や自分らしく働いている人にインタビューを行なっています。インタビューしたいなと思った方がブログもやっていない、Twitterもやっていない、となると諦めてしまうこともあるのです。せっかくのチャンスを逃しているとは思いませんか? SNSだけでなく、ブログでもいいので自分をアピールする場を設けましょう。
ミレニアル世代はスラッシュキャリア志向!
株式会社ジャパンネット銀行の調査「ミレニアル世代VS親世代、「働き方」に対する意識を調査」によると、「スラッシュキャリアという働き方は、今後広まっていくと思う」と答えたミレニアル世代は69%でした。
「スラッシュキャリア」はすでにミレニアル世代の間で浸透していると言ってもいいでしょう。
副業・起業に関心のあるミレニアル世代は多い
株式会社ジャパンネット銀行の調査では、「副業をしたこと/してみたいと思ったことはありますか」という質問に対し、「ある」と回答した割合は以下の通りです。
- ミレニアル世代:70%
- 親世代:57%
ミレニアル世代は、スラッシュキャリアに興味関心が高いこともあり、副業経験者(関心のある人)が親世代に比べて多いという結果が得られたそうです。
また、Earth Labで行なったアンケートでは、起業に興味を持っているミレニアル世代は、起業する予定の人も含めて60%いることが分かりました。起業も肩書きを増やせる手段の一つですね。周囲に起業したミレニアル世代が多いことからも、ミレニアル世代の特徴だと言えるでしょう。詳しくは、以下の記事をご覧ください。
スラッシュキャリアとは何か、注意すべきことについて解説しました。自分のキャリアを誰が見ても魅力的に感じられるよう、戦略的にキャリアを増やしてスラッシュキャリアを実現すると、思わぬ仕事が舞い込んでくるかもしれません。複数のスキルや経験、肩書きを組み合わせると、自分にしかできないことが増えてくるのではないでしょうか。他の誰にも生み出せない価値を提供できる人こそ、市場価値が高いと思います。自分らしく、楽しく生きていけるよう、スラッシュキャリアに挑戦してみてはいかがでしょうか。