GRITとは成功するために必要な「やり抜く力」です。心理学者アンジェラ・リー・ダックワース氏の研究によって、仕事や学業、スポーツなど、あらゆる分野で成功している人たちはGRITを持っていたことが明らかになっています。この記事では、GRITとはなにか、どうやって鍛えるかを解説していきます。
目次
GRIT(やり抜く力)とは
GRITとは、ペンシルバニア大・心理学教授のアンジェラ・リー・ダックワース氏(以下ダックワース氏)が提唱する、成功のために必要な要因です。 ダックワース氏は2013年にTEDに登壇し、自身の研究を発表。2016年に研究をまとめた書籍「Grit: The Power of Passion and Perseverance」がベストセラーになっています。
成功のためにはGRITが必要だということは以下の4つの心理学的研究から証明されました。
- 「ウェスト・ポイント・ミリタリー・アカデミー(アメリカ、ウェスト・ポイントにある軍事教育学校)」の入隊者調査:軍事トレーニングに耐えられる入隊者と、中途退学していく入隊者を予測。
- 「ナショナル・スペリング・ビー(全米スペリング大会)」で、生徒の勝ち残り調査:どの生徒が勝ち残るか、その生徒はどんな性格をしているかを調査して予測。
- 過酷な環境で働いている教育現場の調査:どの先生が教育現場に残るか。残った先生のなかで誰が生徒の学力を引き出して、結果に結びつけることができたかを研究。
- 一般企業のセールス担当調査:どんな人がセールスとして生き残れるか。生き残った人の中で、誰がトップセールスを記録したのかを研究。
研究の中では、生まれつき高い才能や知能を持ちながらも、十分な結果を出せずに挫折をしてしまった人が紹介されています。一方で、才能や知能に秀でていなくても結果を出せている人も紹介されています。結果を出せなかった人は、長期的で継続的な努力をできていなかったのです。GRITは生まれ持った才能や知能とは基本的に関係がありません。成功するために重要なGRITは努力次第で手に入れることができます。
成功に必要なのは才能ではなくやり抜く力
ダックワース氏は、GRITを以下のように説明しています。
「GRIT」とは、物事に対する情熱であり、また何かの目的を達成するためにとてつもなく長い時間、継続的に粘り強く努力することによって、物事を最後までやり抜く力のことです。
出典:Grit: The power of passion and perseverance|TED Talks Education
意訳:ライター川村
ダックワース氏は自身の研究を通して、大きなことを成し遂げたり、成果を残したりする人は情熱と粘り強さを持っていることを発見しました。知能の高さ、外見の良さ、身体能力の高さなど個人の才能は最も重要な要素ではありません。成功するためにはGRITが必要だと述べています。
GRITは短距離走ではなく長距離走。夢や目標に向かって、朝から晩まで夢中になって頑張れるかどうかが問われていて、数年単位で粘り強く努力する必要があります。
GRIT(やり抜く力)は自分次第で手に入れられる
GRITは生まれ持った能力とは関係がないので、トレーニング次第で手に入れることができます。ダックワース氏はGRITを鍛える際には「グロース・マインドセット」を持つことが大事だと述べています。
自分の能力は自分の努力次第で変えることができるという考えが前提にあれば、長期間、粘り強く努力を続けることができるのではないでしょうか。GRITを鍛える2つの方法を紹介します。
GRITを鍛える方法1:好きなことにとことん打ち込む
長期間、継続的に努力を続けるためには、忍耐力や根気、情熱が必要です。何かをしているときに「もうダメだ」と思ってしまうことは必ずあると思います。しかし、そこで自分を奮い立たせて再び目標に向かって努力を続けないと、GRITを手に入れることはできません。
苦手なことよりも、自分が好きなことや興味があることで努力を重ねてみましょう。日本のことわざに「好きこそものの上手なれ」という言葉がありますが、「好き」だからこそ一生懸命に取り組めて、上達も早くなり、努力を続けられるのではないでしょうか。
仕事や勉強、スポーツ、趣味など自分が心から好きだと思えることを探して一心に取り組んでみましょう。努力を重ねるうちに少しずつ成長できるはずです。
GRITを鍛える方法2:失敗を恐れずに挑戦する
まずは自分の直感を信じて、挑戦しましょう。失敗を恐れることはありません。成功のために何が必要なのか、どんな行動をすればいいのかは失敗を通して知ることができます。挑戦と失敗を繰り返しながら、失敗からの学びを次に活かせれば何も問題はないのです。
まずは、長期的な目標を立ててみましょう。次は目標達成のためにどんな努力が必要なのかを考えましょう。そして、実際に行動しましょう。行動の積み重ねでGRITを鍛えることができます。
GRITを持っている人は失敗しても諦めない
最後に、大きな功績を残している人の言葉から、GRITをもっている人のメンタリティを紹介します。
マイケル・ジョーダン
“I’ve missed over 9,000 shots in my career. I’ve lost almost 300 games. 26 times I’ve been trusted to take the game-winning shot and missed. I’ve failed over and over and over again in my life. And that is why I succeed.”
(私は9,000回以上シュートを外し、300試合に敗れた。決勝シュートを任されて26回も外した。人生で何度も何度も失敗してきた。だから私は成功したんだ。)
―Michael Jordan
アメリカのプロバスケットボールリーグNBAで6回優勝し、15年の選手生活の中で10回得点王になっています。また、オリンピックではチームを率いて2度金メダルを獲得。輝かしい実績を残したマイケル・ジョーダンはバスケットボールの神様と呼ばれています。
そんな彼でも、多くの失敗を経験しています。しかし、失敗から何をすればいいかを考えて、学んだことを次の試合で実践し続けていました。失敗から学ぶ姿勢こそ成功者が持つ特徴です。
トーマス・エジソン
“I have not failed. I’ve just found 10,000 ways that won’t work.”
(私は失敗したことはない。1万通りのうまく行かない方法を見つけただけだ。)
―Thomas A. Edison
トーマス・エジソンは生涯におよそ1,300もの発明や技術革新を行ったアメリカの発明王です。彼が蓄音機や白熱電球などを発明したことは、歴史的功績として世界中の人が知っています。エジソンは生来の知りたがり屋。「なぜ『1+1=2』なの?」や「なぜA(エー)をP(ピー)と呼ばないの?」など、ことあるごとに「なぜ?」を連発して先生を困らせていたようです。
他にも好奇心が災いして問題を起こしてしまい、小学校を3ヶ月で中退しています。幼い頃に正規の教育を受けられない厳しい環境でしたが、それでも図書館に通い独学を続けていました。また、新聞配達の仕事でコツコツお金をためて自分の実験室を作ったという逸話もあります。
数多くの発明の裏には、発明の数を大きく上回る失敗があったという彼の言葉はあまりにも有名です。自分の知的好奇心がおもむくままに、失敗を繰り返しながらも実験にのめりこんだ結果、人々の生活を変えた数多くの発明を生み出したのでしょう。一つのことに集中して結果を残しているところがGRITをもっている人の特徴です。
スティーブ・ジョブズ
“Stay hungry. Stay foolish.”
(ハングリーであれ。愚か者であれ。)
―Steve Jobs
スティーブジョブズはマッキントッシュやiPhoneを発明し、人々の生活を大きく変えました。「ハングリーであれ。愚か者であれ」は、彼が2005年にスタンフォード大学ので行ったスピーチの締めの言葉です。生い立ちや自分が創業したアップルを追い出された経験、闘病生活などを織り交ぜながら人生観を語ったこのスピーチは、多くの人を感動させました。
偉大な功績を遺したスティーブ・ジョブズの言葉からは、例え困難にぶつかっても、挑戦を続けなさいというメッセージが伝わってくるような気がします。GRITを持っている人は、何度転んでも、すぐに起き上がることができます。
GRIT(やり抜く力)とは何かを解説してきました。何か目標があって、大きな成果を残したいのであればぜひGRITを鍛えてみましょう。情熱を持ち、目標を達成するために長い時間、継続的に粘り強く努力すれば、必ず結果が残るはずです。才能は関係ありません。物事を最後までやり抜く力があれば、きっと成功を掴み取れるはずです。