パラレルワークとは、複数の本業を掛け持つ働き方のこと。働き方の選択肢が広がり、パラレルワークを実践している人が徐々に増えてきています。今回は、パラレルワークの定義や副業との違い、そして実践例を紹介します。その他にも、パラレルワークを始める際の注意点や、メリット・デメリット、パラレルワークの始め方を解説します。
目次
パラレルワークとは
パラレルワークは英語で表記すると、”Parallel work”です。”Parallel”は「平行な(の)」という意味なので、パラレルワークは平行して複数の仕事を進行させる働き方を指します。漢字では、「複業」と表記されます。パラレルワークを実践している人は、「パラレルワーカー」「複業家」と呼ばれます。
では、なぜパラレルワークが近年注目されるようになったかを紹介します。
パラレルワークはこれからの時代に合った働き方
複数の仕事を同時進行させるのは、とても大変なように思えます。ですが、あえてパラレルワークを選ぶ人が増えてきているのは、労働を取り巻く環境が変化しているからです。例えば以下のような変化が挙げられます。
- 終身雇用制度の廃止
- 技術革新による、人員削減
- リーマンショックのような、突然の経営破綻
- 雇用の流動化
また、「働く」に対する価値観が年々変化してきています。現在の働き世代(20〜30代)は、ミレニアル世代とも呼ばれます。彼らは、団塊の世代とは異なる価値観を持って働いているとさまざまなメディアで紹介されています。
「公益財団法人 日本生産性本部」と「一般社団法人 日本経済青年協議会」が平成29年度新入社員1,882人を対象に行なったアンケート「働くことの意識調査」によると、新入社員の就労意識には以下のような傾向が見られました。
- 人から感謝される仕事がしたい
- 仕事を通じて人間関係を広げていきたい
- ワークライフバランスに積極的に取り組む職場で働きたい
- どこでも通用する専門技術を身につけたい
- これからの時代は終身雇用ではないので、会社に甘える生活はできない
特に太字の3つの価値観は、パラレルワークの人気が高まる要因となった価値観でしょう。
終身雇用制度が廃止されて、個人を実力で評価する企業が増えてきています。結果がふるわなければ、解雇されることもあります。そういった場合に、ある特定の企業でしか通用しない技術しか身につけていないとなると、転職が難しくなります。一つの企業・仕事に留まり続けることにリスクが伴う時代です。
このように、労働環境と働く人の就労意識の変化から、複数の仕事を本業とするパラレルワークはこれからの時代に合った働き方と言えます。「自己実現」「成長」という目的がパラレルワークに含まれています。
パラレルワークと副業の違い
パラレルワークを漢字で表すと「複業」ですが、副業という言葉の方が有名なのではないでしょうか。ここでは、パラレルワークと副業の相違点について、収入面と優先順位という2つの観点から解説します。
どちらも複数の仕事を行うという点では変わりありません。本業ありきの働き方が「副業」、本業という概念をなくした働き方が「パラレルワーク」と言えます。
パラレルワークは単一の収入に頼らない
パラレルワークと副業では、収入の捉え方が異なります。
パラレルワークでは、どれか一つ仕事がなくなったとしても、収入源が残されています。他の仕事である程度の収入を確保しつつ、新しい仕事を探せます。つまり、パラレルワークは収入面でのセーフティネットと言えるでしょう。
一方副業は、収入を増やすことが一番の目的。本業の収入が少ないため、副業を行う人が多いのではないでしょうか。「遊ぶお金が欲しい」「将来のために貯金したい」といった欲望を叶えるために、本業の収入をすぐ増やすことは困難。なので、手っ取り早く収入を増やすために副業をするのです。
パラレルワークは全ての仕事が本業
パラレルワークでは、本業という位置付けの仕事を持たない働き方。決して気軽にできるアルバイトを掛け持つ感覚で、仕事をしているわけではありません。全ての仕事を本業として捉えるため、いずれかの仕事を優先して進めることはありません。全ての仕事に全力を注ぐので、「ある仕事のクライアントから新しい仕事の紹介が来た」「ある仕事で少しだけやっていた簿記が他の仕事で役に立った」といった仕事同士の相乗効果も生まれやすいです。
副業は、一番の収入源である本業を最優先しなければなりません。本業をおろそかにしてしまうと収入が減り、生活が困難になります。また、副業はあくまでも収入アップのためにやるので、いつでも気軽に辞められます。副業では、本業で感じるような責任感は生じないでしょう。
パラレルワークのメリット
パラレルワークで注目すべきメリットは以下の2つです。
- 収入が安定し、やりたいことができる
- 自分の世界が広がる
パラレルワークのメリットを把握し、パラレルワークが自分に向いているか向いていないかを確かめましょう。
収入が安定し、やりたいことができる
パラレルワークでは複数の仕事から収入を得られるため、ある日突然収入がゼロになるリスクは低いでしょう。その分、やりたいことに打ち込める環境が手に入れられます。
本業だけだと、生活維持のために本業で成果を出せるよう努力しなければなりません。加えて、収入を上げるためにはスキルアップが欠かせません。スキルアップをするためには、就業時間以外の時間も使わなければいけないでしょう。本業以外にやりたいことができたとき、それに手をつけられる環境がありません。
パラレルワークでは、一つ仕事がなくなったとしても収入源が他にあります。また、やりたいことができたときは、あえて仕事を減らすことも可能です。生活のための収入に仕事が縛られなくなるのです。
自分の世界が広がる
複数の仕事で得られる経験は、間違いなく自分の世界を広げてくれるでしょう。一つの仕事・一つの企業での経験が、他の仕事で全く通用しないという話を転職経験者からよく聞きます。
複数の仕事を経験すると、ものの見方だけでなく人脈も広がります。人脈が広がれば、新たな仕事の誘いをもらえるかもしれません。また、多くの人と出会う分、多様な価値観や知識に触れる機会が増えます。
人から教えてもらうのは、スキルアップへの近道です。料理人・田村浩二さんは、IT企業の人と話したことで新しいお金の稼ぎ方を知れたそうです。料理人・田村浩二さんの新しい働き方については、こちらの記事をご覧ください。
パラレルワークのデメリット
パラレルワークを始めたいと思っている人は、デメリットもちゃんと確認しておきましょう。何事も悪い面はあります。あなたはパラレルワークのデメリットを乗り越えられる自信がありますか? あるなら、パラレルワークに向いているでしょう。
本章では、以下のデメリットについて解説します。
- マネジメントが大変
- セキュリティ管理が大変
マネジメントが大変
複数の業務の同時進行するにあたって、管理業務は避けられません。
- 時間管理
- タスク管理
- お金の管理(フリーランスの場合)
タスク管理と時間管理が出来ていないと、クライアントやその他関係者に迷惑をかけてしまうでしょう。最悪の場合、複数の仕事が同時になくなってしまうかもしれません。仕事は、人と人の信頼の上に成り立っています。信頼できない人に仕事をお願いしたいとは思いませんよね。
また、フリーランスで仕事を受けている場合、お金の管理を自分で行わなくてはなりません。どうしても苦手ならば、費用がかかりますが外注することも視野に入れておくといいでしょう。
セキュリティ管理が大変
たくさんの人と付き合うということは、守秘義務もたくさん発生します。自分一人で、セキュリティ管理を徹底しなくてはなりません。
セキュリティ管理には、デジタルデータや口頭の情報が含まれます。デジタルデータであれば、以下のような点に気をつけます。
- メールの誤送信
- ファイル管理(簡単に外部からアクセス出来ないようにする)
- コンピュータウイルス対策
口頭で、あるクライアントから得た情報を、許可なしに他クライアントに喋るのは当然NGです。企業に所属している場合は、特に守秘義務に注意しなければなりません。所属している企業の競合他社と付き合う場合は、話す内容に細心の注意を払いましょう。
パラレルワークの注意点
パラレルワークを始めてみたいと考えている人がすでにいるのではないでしょうか。本章では、パラレルワークを始める前に必ずチェックすべき所属企業の就業規則と社会保険について解説します。
知らなかった、では済まされません。トラブルを起こしてたくさんの人に迷惑を掛けないためにも、不明点は解消しておきましょう。
所属企業の就業規則をチェック
あなたがもしすでに企業に所属しているなら、必ず就業規則を確認しましょう。
パラレルワーク、複業と副業に異なる点があると紹介しました。しかし、パラレルワークや複業は就業規則上は「副業」として扱われています。ですので、副業を所属企業が認めているかどうかをまず確認します。副業を認めている企業でも、条件付きの場合があります。不明点がある場合はうやむやにせず、企業の労務担当に確認しましょう。
社会保険・税金の情報をチェック
全ての仕事を個人で請け負う場合は、全ての収入や所得をまとめて計上して確定申告します。ここでは、企業に所属していながら、他に個人で仕事を受けている場合について解説します。
まず確認すべき税金、社会保険は以下の通りです。
大項目 | 小項目 |
税金 | 所得税 |
住民税 | |
消費税 | |
社会保険 | 健康保険 |
厚生年金 | |
雇用保険 | 失業保険 |
労災保険 |
まず消費税についてです。消費税は1年間の売上が1,000万を超えていなければ免除されます。ですので、大抵の人は気にしなくて大丈夫でしょう。その他の税金は、所属する企業からの源泉徴収票と、個人で受けた仕事の源泉徴収の情報(支払調書)を使って税務署で確定申告をします。
社会保険は、勤務状況が「正社員の3/4以上の勤務時間、勤務日数」を満たしている場合に加入できます。もし、所属している企業で社会保険に加入できない場合は、国民健康保険と国民年金に加入します。
雇用保険も、以下の加入要件を満たしていれば所属している企業が負担してくれます。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上継続して雇用される予定である
- 所属先企業が、雇用保険の適用事業所である
詳しい保険料については、国民年金機構のホームページを確認しましょう。
パラレルワークの実例紹介
Earth Labでは、自分らしい働き方を実践している人にインタビューを行なっています。パラレルワークを実践している先輩として、Yukoさんとつぐりさんを紹介します。
お二人ともパラレルワークで自分らしい働き方、生き方を叶えています。
Yukoさん
Yukoさんは、絵描きと会社員を両立しているパラレルワーカー。
絵描きでは、イラストをグッズ化してオンラインショップで販売したり、海外のクライアントから受注したりといった活動をされています。その一方で、フルタイムの会社員として事務の仕事をしています。
海外のクライアントからの仕事を受注したきっかけは、知り合いの画家からの紹介とのこと。また、Yukoさんが所属している企業は、Yukoさんが絵描きとして活動していることを知っているそうです。そのおかげで、会社での仕事は事務ですが社内の配布物のデザインを頼まれたのだとか。仕事同士で相乗効果が生まれていますね。
つぐりさん
つぐりさんは、クリエイターとして活動しつつ、パートでレンタルショップの店員と医療事務を掛け持っています。クリエイターとしては、イラストやWebサイトのロゴ、キャラクターデザインなどを手がけています。
つぐりさんは、イラストの専門学校に通ったり、誰かに教えてもらったりした経験がありません。独学でイラストの経験を積み、報酬額の低い仕事からスタートしたそうです。
つぐりさんの働き方で特徴的なのは、クリエイターとしての活動時間と主婦として旦那さんを支えるため、あえてパートという勤務形態を選んでいるところ。また、つぐりさんは本業一本だと頑張りすぎてしまう自分に気づき、パラレルワークという働き方を選択するに至ったそうです。
パラレルワークを成功させるために大事なのは、情報発信と仕事管理とのこと。ブログやTwitterでクリエイター仲間と繋がることで、新しい情報や悩み相談ができます。また、作品をSNSで発信すれば、興味を持った人から仕事の依頼が舞い込むチャンスも生まれるとつぐりさんは語ります。
パラレルワークの始め方|おすすめサービスを紹介
パラレルワークを始めるには、まずは手軽なクラウドソーシングサービスを利用してみることをおすすめします。サービス上で成果が出てきたら、個人で仕事を請け負えるよう自ら情報発信をしましょう。
クラウドソーシングサービス
クラウドソーシングサービスは、仕事を依頼したい人と仕事を探している人をマッチさせるプラットフォームです。日本では、CrowdworksとLancersが有名でしょう。
短期間の仕事が多いので、無理なく自分のペースで始められます。CrowdworksとLancersは、募集している仕事の種類が非常に豊富です。中には、イラストやキャッチコピーのコンペといった、実力を試せる形式の仕事もあります。
クラウドソーシングサービス上で出会ったクライアントと、サービスを介さず取引をするのは禁止されています。その他にもサービス利用の条件がありますので、利用する際は利用規約に必ず目を通しておきましょう。
自分の制作物を発信したり、コメントを通して交流を広げるにはTwitterが欠かせません。Twitterのダイレクトメール機能を活用すれば、仕事の依頼を受けることもできます。
文章が得意であれば、人を惹きつけられる文章を書いていくうちにフォロワーがどんどん増えていくはずです。また、画像や動画を一緒に発信して自分らしさを伝えやすいのもTwitterの魅力です。
パラレルワークの定義やメリット、デメリット、注意点を解説しました。自分らしく働ける手段として、パラレルワークを選択する人は今後増えていくでしょう。どんな働き方が自分に合っているかを探るため、パラレルワークを実践してみてはいかがでしょうか。