仕事もプライベートも人生の一部として統合的に捉える「ワークライフインテグレーション」という考え方が徐々に広がってきています。仕事やプライベートでの経験がお互いに相乗効果を生んで、人生が豊かになります。
働く場所や時間を柔軟に選べるようになれば、ワークライフインテグレーションを実践しやすくなるでしょう。この記事では、旅先で仕事をする「ワーケーション」や出張のついでに休暇を取る「ブリージャー」という働き方を紹介します。
目次
ワーケーション|旅先で遊びつつ仕事をする
「ワーケーション(Workcation)」とは、旅先で休暇を楽しみながら仕事をする働き方です。仕事(Work)と休暇(Vacation)を合わせた造語。休暇を取得して旅行を楽しみながら、仕事をします。仕事をしている時間は勤務時間にみなされるので、賃金が支払われます。
ワーケーションの考え方が広がった背景と、日本での取り組みを紹介していきます。
ワーケーションはアメリカで広まった
アメリカでは「勤務時間が自由」「リモートワークOK」などの制度を整えている企業が増えています。そのため、いつでもどこでも働ける環境が整っています。
仕事をしていると、長期休暇をとって旅行に出るのは難しいでしょう。しかし、リモートワークが可能で、働く時間に柔軟性があれば、旅行先で仕事をすることができます。そのためアメリカでは旅行計画に、仕事をする時間を組み込むワーケーションが2015年頃から広がっていきました。
ワーケーションが可能であれば、旅行がしやすくなります。しかしオンとオフの境目が曖昧になる一面もあります。そのため「休暇を取得したのに、合間に仕事をしなければならないので、完全にリラックスできなくなってしまうのでは?」という議論も起きています。
日本のワーケーションの取り組み
日本ではJALや日本マイクロソフトがワーケーションの制度を導入しています。
JAL
JALは2017年にテレワークを推進する働き方改革の一環として、ワーケーションの試験運用を実施しました。
- 期間:2017年7月から8月までの2ヶ月間のうち、最大5日間
- 狙い
・社員が早朝や夕方以降の時間を自由に過ごすことで、業務への活力につなげる
・旅行の機会を増やし、社員が家族と過ごせる時間が増やす
・社員が地方で開催されるイベントに積極的に参加することで、地域の活性化に貢献する
参考:JALのワークスタイル変革
『JAL は、テレワークを推進し、働き方改革を進めます~「ワーケーション」など新たな働き方に取り組みます~ 』
JALの中丸亜珠香氏は、うまくワーケーションを利用しています。8月中旬に休暇をとって帰省する予定を立てていたところ、どうしても外せない会議が急遽決定。普段なら帰省キャンセルを考えていたそうです。しかしワーケーションを利用して、帰省先からWeb会議に参加できました。(参考:JALのワークスタイル改革)
日本でもワーケーションが広がれば、遠慮せずに休暇を取得する人が増えるのではないでしょうか?ワーケーションは、仕事もプライベートも犠牲にすることなく働ける一つの手段です。
日本マイクロソフト
日本マイクロソフトでは2016年から、働く場所や時間を制限しないテレワーク制度を推進しています。その中にはワーケーションも含まれています。
2,000人以上の社員を抱える日本マイクロソフトは、全社員を対象にワーケーションを実施しています。日本マイクロソフトでは、世界中のどこにいても成果さえ出していれば問題ないという考え方です。
日本マイクロソフトでは働き方に柔軟性をもたせて以来、事業生産性が26%向上しているようです。新しい働き方制度を運用しつつ結果を残せている事実は重要です。
和歌山県の白浜町の取り組み
和歌山県は「和歌山ワーケーションプロジェクト」を立ち上げ、企業や一般の人に向けてワーケーションを体験できるプログラムを実施しています。2017年からワーケーションの滞在先として和歌山県をPRしています。
インターネット環境が整った施設を用意。参加者に仕事をしてもらい、その後は海水浴や観光を楽しんでもらうというプログラムがあります。
ブリージャー|出張先で休暇をとる
欧米でブリージャー(bleisure)という働き方が広がっています。ビジネス(business)とレジャー(leisure)をあわせた造語。出張で仕事を終えたあと、休暇をとって観光します。
ブリージャーは出張のついでに休暇を取得する制度です。旅先でリモートワークを認めて勤務扱いになるワーケーションとは異なります。
オンライン宿泊予約サイト「Booking.com」は「ブッキング・ドットコムが予想する2017年の旅行業界の8大トレンド」で、出張旅行にレジャー旅行をつなげるブリージャーのブームが続くと発表しています。
2016年の海外旅行者全体のうち出張目的は40%で、その46%が「2017年には出張旅行の機会がさらに増えるだろう」と回答しました。49%は「滞在期間を延長して出張先を満喫」し、75%は「来年も同じように滞在を延長するだろう」としています。
出典:ブッキング・ドットコムが予想する2017年の旅行業界の8大トレンド-2. 出張旅行の付加価値|Booking.com
出張に休暇をつなげるブリージャーはまだまだ日本では馴染みがありません。アメリカやヨーロッパなどでは2014年頃から広まっているそうです。
企業がブリージャーを認めるためには、出張に休暇をつなげた際の経費精算方法や休暇先で事故があったときの対処方法など、ルールを作る必要があります。
日本でブリージャーが認められるようになるにはまだまだ時間がかかるのではないでしょうか?
旅をしながら働ける?
日本では働き方改革が進められ、多様な働き方が認められつつあります。しかし、世界の働き方は一歩先を進んでいます。エストニア発の「ジョバティカル(Jobbatical)」という求人プラットフォームを使えば、世界中を旅をしながら働けます。
Jobbaticalでは住みたい国と、参加したいプロジェクトで仕事を探せます。世界中を旅する人に向けたサービスです。27ヶ国から多くの仕事が集まっています。
募集している企業の多くはスタートアップで、ビジネスを拡大できるようなスキルの高い人材を求めています。募集職種には、iOSデベロッパーやQAエンジニア、データエンジニアなどITエンジニア職が多めです。中にはグロースハッカーや動画制作のプロデューサー、コンテンツライターなどの仕事もあります。
Jobbatical経由で採用されると、プロジェクトの期間中は正社員として雇用されます。プロジェクトの期間は1〜2年が多く、求められるスキルレベルが高いので、給料は高めです。プロジェクトが終われば、次の国で仕事を探すことになります。応募者は自分のスキルを活かして世界を旅しながら働けるのです。移住やビザの取得のサポートを受けられることもあります。
英語力は必須ですが、仕事仲間とコミュニケーションを取れるレベルがあれば問題ありません。何よりも重要なのは、専門的なスキルの高さです。
働く場所と時間が自由になれば、今以上に多様な働き方を選べます。ワーケーションやブリージャーのような制度が日本に広がれば、ワークライフインテグレーションで人生を豊かにする働き方を実現できると思います。