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2018.09.07

ワークシェアリングとは? 導入メリット・デメリットと、日本で導入が進まない理由

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BY Philly

近年、ワークライフバランスやワークアズライフなど、さまざまな働き方が話題になっています。ワークシェアリングは、同じ仕事量を今までより多人数で取り組むことで、一人ひとりの負担を減らすという考えです。その名の通り、仕事を複数人で共有すること。本記事ではワークシェアリングの概念と、導入事例を解説します。

 

ワークシェアリングとは

ワークシェアリングという言葉自体は、1980年頃にはすでにヨーロッパに存在していたようです。生産人口に当たる人材の総活用がワークシェアリングの主な目的です。 本章では、日本でワークシェアリングが導入され始めた背景と、ワークシェアリングの種類を紹介します。

日本でワークシェアリング制度が話題になった理由

日本では、少子高齢化による生産人口の減少が問題になっています。ワークシェアリングによる現在働いていない人の活躍は、生産人口減少問題に対する1つの打開策です。厚生労働省の発表資料によると、高齢者や女性たちにとって働きやすい制度を整え、労働者を増やす取り組みとして、ワークシェアリングの導入が進められています。

ワークシェアリングの種類

ワークシェアリングに関する調査研究報告書では、ワークシェアリングには4つの種類があると述べています。雇用維持型(緊急避難型)、雇用維持型(中高年対策型)、雇用創出型、多様就業対応型の4つです。

雇用維持型(緊急避難型)

急な経営悪化が起きた場合、人材が流出してしまわないようなワークシェアリング制度

雇用維持型(中高年対策型)

定年以上の年齢の従業員に対する取り組みを含むワークシェアリング制度

雇用創出型

失業者を減らし、新たに労働者の数を確保するためのワークシェアリング制度

多様就業対応型

時短勤務や週休3日以上など、社員が働きやすい環境を提供し、雇用機会を増やすワークシェアリング制度

 

日本でのワークシェアリング導入が進んでいない理由

厚厚生労働省主導は、上場企業3,375社および企業に勤務する4,000人を対象に、ワークシェアリングに関するアンケート調査を実施しました。その結果、回答者はワークシェアリングに対して以下のような懸念を抱えていることが分かりました。

  • 賃金低下
  • パートタイムとフルタイムでの処遇の差
  • 合意形成について

賃金低下の懸念

ワークシェアリングを導入すると、労働時間が短くなる場合が多いです。勤労者のみを対象としたアンケート調査では、緊急避難措置としてのワークシェアリングに対して、勤労者の63.8%が「賃金の低下が心配である」と回答しました。また、「賃金や退職金の取扱いに不安を感じる」と答える勤労者が72.7%もいました。

パートタイムとフルタイムの処遇の調整

従来のパートタイムワーカーと、ワークシェアリング制度の一環で採用されたパートタイムワーカーは少し異なる性質を持ちます。後者は、いわゆる正社員と同様の働きをします。労働時間はそれほど変わらないのに、従来のパートタイムは雇用保険や企業年金に加入できない。このあたりの留意や決定に戸惑っているのではないでしょうか。

労働者と雇い主の合意が必要

厚生労働省のアンケート調査によると、ワークシェアリング導入には、以下を満たす必要があると述べられています。

我が国における終身雇用制を軸とした日本的雇用慣行は、徐々に見直しの動きが広がりつつあり、労使間で雇用管理のあり方等についての合意形成が必要となっている。

賃金や処遇の問題をクリアにしない限りは、労働者からの同意が得られません。道のりは決して平坦ではありません。

 

ワークシェアリング導入のメリット

厚生労働省が報告した「人口減少社会」に対応できる企業を目指してで発表したメリットを基に、4つのメリットを紹介します。

長時間労働の是正

ワークシェアリングの導入で、一人ひとりの労働時間が短くなることが期待されます。労働時間が短くなり、ワークライフバランスが実現しやすくなります。心の安定は、翌日の仕事のモチベーションにも関わってくるでしょう。いい循環を生むのではないでしょうか。

自己成長に使える時間の増加

労働時間が短くなることで、自分で自由に使える時間が増えます。空いた時間を使って、趣味や自己啓発を行えます。厚生労働省は、国際化やテクノロジーの発展に対応できる人材へと変容していくことが労働者に求められるだろうと考えています。一人ひとりの成長は、ひいては社会全体の成長に繋がっていくはずです。

仕事と家庭の両立

平成を過ぎてから、共働き世帯と専業主婦世帯の割合は年々変化しています。平成26年には、共働き世帯の数は、専業主婦世帯の約2倍を記録しています。つまり、仕事をしつつ家庭のこともこなさなけらばならない人が増えているのです。産休や育児に対しての社内理解は、働く親にとって大きな支えです。仕事と家庭の両立に理解のある企業であれば、長期的に勤めたいと思う社員が増えるのではないでしょうか。

高齢者の継続雇用

高齢者が培ってきたノウハウや知識を、若い世代の人が補うことはできないでしょう。2015年に、映画「マイ・インターン」のシニア・インターンが話題になりました。映画では、どんな仕事もこなせる若手CEOが、仕事や人生におけるさまざまなことをシニア・インターンから教わりました。ワークシェアリングで雇用を拡大するにあたり、高齢者への対策は欠かせません。高齢者の雇用制度を整える会社が増えるほど、働き続ける高齢者も増えるでしょう。

 

ワークシェアリング導入のデメリット

JISA(情報サービス産業協会)の資料によると、ワークシェアリングにはさまざまなデメリットが存在します。大きなデメリットは3つ。引き継ぎの負担、責任の所在が曖昧、そして従業員管理の負担増です。

引き継ぎの負担

一つのタスクを複数人で担ったり、新たな人材を受け入れたりすることで、引き継ぎの回数が増えます。ワークシェアリングの仕組みが整い、人材が安定するまでは、労働の一定時間を、引き継ぎに割かなければいけないこともありえます。ワークシェアリングですでに労働時間が短くなっている中での引き継ぎは、個人の生産性を低下させるリスクもあります。

責任の所在が曖昧

仕事の担当者が増え、各々の担当する時間は自然と減ります。ミスが発生した際に、どの担当者に責任があるのかが特定しづらくなってしまいます。各担当者が仕事を休んでいる場合の対応を、あらかじめ想定しておく必要がありそうです。

従業員管理の負担増

雇う人数が増えると、人事や経理、総務の業務の絶対量が増えます。従業員の勤務形態が多様になると、各勤務形態を理解する必要があります。管理業務の幅が広くなると考えられます。

 

日本企業のワークシェアリング導入事例

実際にワークシェアリングを導入している企業はあるのでしょうか。ワークシェアリング導入、と聞くと馴染みがないように感じます。しかし、時短やリモートワーク、と捉え直すと、ワークシェアリングを実践している企業は多くあります。厚生労働省の実践例に関する資料を基に、3社の例を紹介します。

工場週3休制で雇用維持

東証一部上場、従業員数約500人の半導体製造メーカーの例です。

ITバブルが弾けた際の対策として、「工場週3休制」を実施しました。週に1日ずつ休日が増えるため、1ヶ月の休日が4日間増えることになります。会社側が設定した休業日のため、有給一斉取得日を組み込んだり、本来の出勤日に対しては日割り給与の一部を支給したりすることで対応していました。

従業員からは「時給換算だと給与が上がった」「休日をゆっくり過ごせるようになった」などの感想が挙がりました。同社は、従業員からワークシェアリング導入の理解を得られたとしています。

ワークライフバランスの向上

東京港区に日本子会社としてオフィスを構え、従業員数20,000人を超える国際的コンピューターメーカーの例です。

世界中に社員を抱える企業のため、約3年ごとに、ワークライフバランスに関する調査を行なっています。それによると、成績の良い社員ほどワークライフバランスが取れていない傾向があるそうです。同社は、この傾向の対策としてさまざまな取り組みを行なってきています。取り組みのうちワークシェアリングの事例対象となったのは、短時間勤務制度です。

週3〜5日の中から、好きな勤務体制を選びます。週3日になるほど、通常よりも給与は下がります。しかし、在宅でも勤務を可能としており、評価制度も通常社員と全く変わらないことから、育児や就学などのために利用する社員がいるようです。短時間勤務制度により、子供を持つ社員の変化が見られたようです。これまでは育児休暇を最長の2年取得して復帰する社員が多かったものの、育児休暇を2年未満で終え、短時間勤務で復帰する社員が大幅に増えたそうです。

リモートワークで私生活を尊重

東京都千代田区に本社を構える、従業員数約1,500人の外資系ソフトウェアメーカーの例です。

事例企業は、成果主義を徹底しています。育児、介護、療養などの個人的事情がある状況でも、社員が成果を出しやすい職場環境を作ろうとワークシェアリングを取り入れています。取り組み内容として、在宅勤務を認めています。勤務時間は、通常社員の75%を基本としています。

制度の対象は、個人的事情により出勤が負担となる社員。成果が客観的に判断できることを条件に、在宅勤務を認めます。「長期間の休職をしてしまうと復帰が心配」だと感じる社員の利用が多くみられたようです。

 

オランダ企業のワークシェアリング導入事例

オランダは、ワークシェアリングの先駆者として挙げられることが多いです。ワークシェアリングの成果 ―オランダ、ドイツ、フランスによると、オランダのワークシェアリングの目的は、短時間労働者を新たに生み出すことを念頭に置いていたようです。導入後、成功を収めているオランダの事例を見てみましょう。

サービス分野で雇用を増やした

オランダでは、ワークシェアリングの導入後、パートタイム労働者の割合が高くなっています。そして、2014年時点での女性の就労割合は約8割となっています。増えた労働人口は、その多くがサービス業に従事しています。平成13年度の内閣府調査によると、導入後、製造業での雇用者の伸びがマイナス1.5%であった一方、サービス分野では、2.0%の上昇がみられたそうです。

 

フランス企業のワークシェアリング導入事例

フランスでのワークシェアリングの拡がりは、2000年に成立したオブリ法・第二次法が起因と言われています。オブリ法・第二次法をきっかけに、ワークシェアリングを導入した企業例をみてみましょう。必ずしも、いい結果を残すわけではないようです。

ルノーによる週35時間労働

オブリ法・第二次法の内容は以下の3点が特徴だと述べられています。

①法定労働時間を週35時間とすること

②早期実施へのインセンティブとして企業に対して社会保障負担の時限的な軽減措置がとられたこと

③時短の具体的実施方法等は労使間に委ねられていること

これを受けて、仏車メーカーのルノーは、週35時間労働を盛り込んだ制度を3年間継続しました。その結果、新規の雇用創出にはなったものの、雇用維持の効果はなかったようです。週35時間といえど、実際どこまでその規則が遵守されてたのかが疑問に残りますね。

 

ドイツ企業のワークシェアリング導入事例

ドイツでは、ワークシェアリングの概念が1980年代には存在していました。自動車業や金属業で、ワークシェアリングの実践例があったようです。ドイツがワークシェアリングを導入する目的は、雇用創出よりも雇用維持の観点が重要だったようです。不況期におけるワークシェアリングの可能性(合力知工著)を参考にしました。

フォルクスワーゲンで週28.8時間労働

独車メーカーのフォルクスワーゲンでは、「ベンチマーク・プロダクション5000×5000」を実施していました。月収を5,000マルクス(約28万円)とし、5,000人の人員増加を目指すことから、このプロジェクト名になりました。ワークシェアリング導入による直接的な効果は記されていないものの、その後、雇用維持は叶っているようです。一方で、ドイツ全体の失業率は一向に下がらず、課題は残っています。

 

ワークシェアリングを導入するには

実際に、企業がワークシェアリングを導入する場合に気をつけたいポイントがあります。どのようなワークシェアリング型で実施するのか、実施期間はどうするのか、そして、給与はどのように割り当てるか。これらを定めてから、発表・導入を行うとスムーズに進みやすいかもしれません。

休業型か、短縮型か

日本の企業で「工場週3休制」を実践した例があるように、本来の労働日を休みにしてしまう休業型が、導入のタイプとして考えられます。また、週の労働時間を減らす短縮型もあります。休業型、短縮型で起こりうるリスクを洗い出し、どちらがより効果的かを考えましょう。

実施期間はいつからいつまでか

初期導入後、「大成功! 」となれば良いのですが、制度を変えるのはなかなか難しいものです。制度が自然に廃れていくことを防ぐためにも、実施期間を決め、その後は反省と再試行を繰り返しましょう。

給与の扱いを決めておく

休業型にせよ、短縮型にせよ、労働時間が短くなるため、給与にも影響があります。ワークシェアリング導入に当たって、従業員たちの理解が得られるよう、準備・説明に時間を割く必要もあります。

 

 

いかがでしたか。自分の勤めている企業が、「ワークシェアリングを導入します」と発表した時に焦らずにすむよう、概念の理解や事例からイメージを膨らませておくのも良いかもしれません。

最終更新日
2018.09.07

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